井上登 (裁判官)

井上登（いのうえのぼり）は、日本の司法史に名を刻む、最高裁判所判事として活躍した人物です。1885年、千葉県に生まれました。東京帝国大学法科大学を卒業後、1917年に判事としてキャリアをスタートさせます。

彼の経歴は輝かしいものでした。東京地方裁判所部長時代には、国際労働会議の政府代表顧問としてジュネーブに派遣され、国際的な舞台で活躍。その後、東京控訴院判事、大審院判事などを歴任し、司法省初代調査部長も務めました。大審院判事在任中には、慶應義塾大学、明治大学、専修大学で民事法を講義するなど、教育活動にも携わっていました。

1947年、裁判官任命諮問委員会の諮問を経て、最高裁判所判事に就任。この時代は、戦後の日本の司法制度再構築という重要な時期であり、井上氏は刑事事件の裁判において最前線で活躍しました。特に有名なのが三鷹事件への関与です。法廷での厳格な姿勢は有名で、開廷時間に遅刻することもあったと言われています。そのたびに、書記官が玄関まで法服を持って出迎えたという逸話も残されています。

1955年に最高裁判所判事を定年退官した後も、その活躍は止まりませんでした。1956年から1961年にかけては、日本野球機構のコミッショナーに就任。米田哲也選手の阪急と阪神の二重契約問題など、難しい問題にも法的見地から対応し、プロ野球界の発展に貢献しました。その功績が認められ、1964年には勲一等瑞宝章を受章、1965年には野球殿堂入りを果たしています。

彼の法律家としてのキャリアは、単に判事として法廷に立つことだけではありませんでした。国際会議への参加、大学での教育活動、そしてプロ野球界でのコミッショナーとしての役割など、多岐に渡る活動を通して、日本の社会に貢献しました。その幅広い経験と深い法律知識、そして強い正義感こそが、井上登という人物を特徴づけるものだったと言えるでしょう。

1971年、86歳で肺気腫のため逝去しました。その生涯は、日本の司法制度と社会の発展に貢献した、偉大な法学者としての足跡を刻み込んでいます。彼の功績は、日本の司法史、そしてプロ野球史においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。様々な資料を元に、井上登氏の生涯を詳細に記述することで、彼の司法への貢献と人物像をより深く理解することができます。彼の経験と功績は、後世の法律家や司法関係者にとって、貴重な教訓と指針となるでしょう。

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