井上秀二

井上秀二：日本の土木技術を牽引した先駆者

井上秀二（いのうえ しゅうじ）は、1876年（明治9年）に宮城県仙台市で生まれ、1943年（昭和18年）に生涯を閉じた日本の土木技術者です。海軍大将である井上成美の実兄としても知られています。

生い立ちと学歴

秀二は、宮城県尋常師範学校附属小学校、宮城県尋常中学校、第二高等学校を経て、京都帝国大学理工科大学土木工学科に進学しました。1900年（明治33年）には、同大学の第一期生として卒業し、その優秀さから恩賜の銀時計を授与されました。大学卒業後は、母校で助教授を短期間務めましたが、その後は研究職や官僚の道には進まず、フリーランスの土木技術者として活躍しました。

土木技術者としての活躍

秀二は、1902年（明治35年）に京都市土木課長に就任し、その才能を発揮しました。1907年から1908年にかけては、水道事業の視察のため欧米やエジプトへ出張し、帰国後は京都市臨時事業部技術長兼水道課長として、京都市の上下水道の新設、疏水発電の増強、市電の新設という三大事業を推進しました。

その後、横浜市水道局工事長に就任し、相模川支流の道志川から横浜市へ給水する大規模な引水工事を完成させました。この工事は、21世紀の現在も横浜市の主要な水源として利用されています。さらに、猪苗代水力電気土木課長、東京電燈理事建設部長などを歴任し、日本のインフラ整備に大きく貢献しました。

また、1936年（昭和11年）から1937年（昭和12年）にかけては土木学会の第24代会長を務めました。その他、水道研究会理事長、水道協会理事、函館水道顧問、富山電気顧問、名古屋市顧問など、多くの要職を歴任しました。

人物像

井上秀二は、12人兄弟の四男として生まれましたが、兄たちが夭逝したため、実質的には井上家の長男として育ちました。兄弟間では、秀二が親分格として、弟たちの勉強を教え、規律を重んじる生活を送っていたようです。また、音楽を愛し、兄弟で楽器を演奏して楽しんでいたというエピソードも残っています。特に、秀二は歌が上手で、民謡を歌う腕前は素人の域を超えていたと言われています。

秀二は、幼少期から学業成績が抜群であり、その才能は周囲からも認められていました。一方で、その才能を妬んだ教師によって、意図的に落第させられたという逸話も残っています。二高時代には「識見卓抜、成績群に絶」し、京都帝大では「天稟の英質いよいよ輝きを増し、学徳ともに儕輩を抜」いたと評されています。

秀二は、能弁家であり、ユーモアあふれるスピーチが得意で、多くの人を魅了しました。また、家族思いで、弟の井上成美の母代わりであった妻の「たま」と共に、成美を支え続けました。

井上秀二の墓は、東京の多磨霊園にあり、弟の成美も同じ墓に眠っています。

まとめ

井上秀二は、日本の土木技術の発展に大きく貢献しただけでなく、その人柄と才能で多くの人々を魅了した人物でした。彼の業績は、現代の日本のインフラを支える礎となっています。彼の生涯は、技術者としてだけでなく、人間としても尊敬に値するものでしょう。

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