井上義夫

井上義夫の概要

井上義夫（いのうえ よしお）は、1946年9月に生まれた日本の著名な文芸評論家であり、イギリス文学の専門家、翻訳者です。彼は一橋大学の名誉教授で、その豊かな研究遍歴と翻訳活動により日本の文学界に多大な影響を及ぼしています。特に、和辻哲郎文化賞を受賞した『評伝D・H・ロレンス』の3部作で知られています。2025年には瑞宝中綬章を授与される予定です。

学歴とキャリア

徳島県の出身である井上は、徳島県立城南高等学校を卒業後、1969年に一橋大学経済学部を卒業しました。その後、1974年には大学院の社会学研究科に入学し、博士課程を修了することはありませんでしたが、彼の学問的な旅はここから始まります。指導教官は増谷外世嗣教授で、彼の指導のもとで井上は文芸評論とイギリス文学の深い理解を身につけました。

彼の学問活動は多岐にわたります。1974年には相模女子大学短期大学部で専任講師として教鞭をとり、その後1976年に助教授、1980年には一橋大学法学部の助教授へと昇進しました。1983年から1985年の間は、ケンブリッジ大学にて客員研究員として国際的な視点を養いました。その後、一橋大学の教授となり、1998年から1999年及び2000年から2002年には評議員を務めました。また、2000年には言語社会研究科長を任じられ、国際的な視野を持った教育活動を支えました。2003年から2004年にはウィーン大学の客員教授としても活躍しました。2010年には一橋大学から名誉教授の称号を授与され、2010年以降は大学院言語社会研究科の特任教授としての役割を果たしています。さらに、テクスト研究学会の会長としても貢献しています。

主な業績

井上義夫の業績で特に注目されるのが、『評伝D・H・ロレンス』の3部作です。この著作では、20世紀を代表する作家D・H・ロレンスの生涯を深く掘り下げ、その文学的な影響を分析しています。第1部の『薄明のロレンス』、第2部の『新しき天と地』、第3部の『地霊の旅』は、ロレンスの作品や思想を様々な角度から検討し、新しい解釈を示しています。この作品が評価され、1995年に和辻哲郎文化賞を受賞し、2003年には一橋大学の学術博士号を獲得しました。

著書には『ロレンス 存在の闇』や『村上春樹と日本の「記憶」』などがあり、村上春樹の文学的テーマに関する洞察も提供しています。また、『ロレンス游歴』では、ロレンスの著作や生涯、思想の旅を通じて読者に新たな視座を与えています。

翻訳活動

翻訳家としても活躍しており、2010年にはコンラッド短編集をちくま文庫で出版しました。さらに、D・H・ロレンスの短篇集や、E・M・フォースターの短編集など、多様な英語文学作品を日本語に紹介しています。最近では、ジョン・ラスキンの『ヴェネツィアの石』や『フィレンツェの朝』など、重要な作品の翻訳も手掛けています。

終わりに

井上義夫は、イギリス文学の研究を通じて日本の文芸界に多大な貢献をしているだけでなく、高度な学問的成果を世界に発信している知識人です。その多彩な活動は、今後も日本の文学研究に大きな影響を与え続けることでしょう。

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