井上達三

井上達三：重砲の権威として活躍した陸軍中将

井上達三（いのうえ たつぞう、1877年8月29日 - 1950年）は、日本の陸軍軍人であり、最終階級は陸軍中将です。海軍大将である井上成美の実兄としても知られています。

生い立ちと陸軍入隊

宮城県仙台市に生まれた井上は、小学校時代に山梨勝之進海軍大将と同級生でした。東北学院を経て陸軍士官学校に進み、1899年11月に卒業。陸軍砲兵少尉に任官しました。同期には、寺内寿一元帥や多門二郎中将など、後に名を馳せる軍人がいました。

陸大を経ずに重砲の権威へ

井上は陸軍大学校を卒業していません。しかし、臼砲や要塞砲の開発に貢献し、重砲の権威としてその名を轟かせました。少将時代には重砲兵学校長を務め、1932年には中将に進級。同時に輜重兵監に任命されました。

輜重兵監への転身と教育者としての手腕

畑違いの輜重兵監への異動は、当時輜重兵出身者の人材不足を補うための措置でした。井上は輜重の専門家ではなかったものの、卓越した人格と識見を持つ教育者として、その職務を果たしました。しかし、輜重兵出身者からは不満の声も上がり、一悶着もあったようです。

陸軍における特例と井上の処遇

帝国陸軍では、陸大卒業者が優遇され、昇進で有利な立場にありました。また、砲工学校高等科の優秀な卒業者や、大学で学位を得た者も陸大卒業者と同等に扱われました。井上は、これらのいずれにも該当しない「無天組」でしたが、その技術力と実績から、陸軍内で特別な地位を築きました。技術将校として大将に任じられた「無天組」は緒方勝一などごく少数です。井上は、大将には至らなかったものの、緒方に準じた処遇を受け、中将に昇進したと考えられています。

晩年と公職追放

1935年に予備役編入となった後、井上は法政大学総長に招かれ、法政大学第二中学校の校長や、法政大学航空工業専門学校主幹などを歴任しました。しかし、敗戦後、法政大学を追われることになります。1947年には公職追放の仮指定を受けました。

井上の栄典

1925年に正五位、1940年には紀元二千六百年祝典記念章を受章しています。

井上達三は、陸軍大学校を卒業していないながらも、その専門性と実績で陸軍中将まで昇りつめた人物です。重砲の専門家として、また教育者として、その生涯を日本の軍事と教育に捧げました。

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