井上隆明

井上隆明（いのうえ たかあき）は、1930年12月6日に秋田県鹿角市毛馬内で生まれ、2021年1月9日に敗血症のため逝去した、日本の近世文学研究者です。秋田経済法科大学の元学長であり、同大学の名誉教授、さらにノースアジア大学の名誉学長も務めました。本籍は群馬県にあります。

人物

井上は、父の転勤に伴い秋田県や山形県を転々としました。1950年に秋田中学校を卒業後、早稲田大学第一文学部へ進学。在学中は、金子光晴や八木義徳らに師事し、小説方法史を研究しました。早稲田大学卒業後は、秋田魁新報の記者として社会に出ます。

1987年には、「江戸戯作の研究: 黄表紙を主として」という研究で、早稲田大学から文学博士の学位を取得しました。その後、秋田経済大学・秋田短期大学で助教授、教授を歴任し、秋田経済法科大学の教授となります。1995年から2001年までの間、秋田経済法科大学の学長を務めました（1997年までは秋田短期大学の学長、その後は秋田経済法科大学短期大学部の学長も兼任）。同大学の名誉教授となった後、福岡大学の教授も務めました。

2016年には、秋田経済法科大学の後身であるノースアジア大学経済学部の教授に就任。翌年には同大学の名誉学長となっています。

井上隆明は、その生涯を通じて、日本近世文学、特に江戸時代の戯作文学の研究に深く携わりました。また、地域文化にも深い関心を持ち、秋田の文学や歴史に関する著作も多数発表しています。彼の研究は、江戸文学の理解を深めるだけでなく、地方文化の重要性を示すものでもありました。

主な著書

『秋田の今と昔』歴史図書社　1977　のち東洋書院
『文学と地方文化論』高文堂出版社　1977
『落首文芸史』1978　高文堂新書
『秋田古典文学史』歴史図書社　1979
『近世書林板元総覧』青裳堂書店　1981　日本書誌学大系
『喜三二戯作本の研究』三樹書房 1983
『江戸戯作の研究 黄表紙を主として』1986　新典社研究叢書
『江戸コマーシャル文芸史』高文堂出版社　1986
『物語素の法則 原物語のセオリー集・原小説タイポロジー・意味素から物語素へ』高文堂出版社 1988
『江戸文学への誘惑』高文堂出版社 1991 誘惑双書
『平秩東作の戯作的歳月 江戸天明文壇形成の側面』角川書店　1993
『東北の文学・秋田の文学 道奥古典ノート』秋田文化出版　2001
『東北・北海道俳諧史の研究』2003　新典社研究叢書

編著

『秋田民俗事典』編　秋田経済大学雪国民俗研究所　1965
『文学的図像事典 象徴・寓意の解釈法』編　高文堂出版社　1981
『江戸諸藩要覧』編　東洋書院　1983
『秋田のうたと音楽家』編著　秋田文化出版社　1987
『秋田近世の茶道』編著 書肆えん 2010 プチ秋田本シリーズ

現代語訳

工藤平助『赤蝦夷風説考 北海道開拓秘史』 教育社歴史新書 1979。シリーズ原本現代訳

参考

『江戸コマーシャル文芸史』著者紹介

脚注

井上隆明の研究は、江戸文学、特に戯作文学の分野において重要な貢献をしました。彼の著作は、学術的な価値だけでなく、一般の読者にも江戸文学の面白さを伝えるものとして評価されています。また、地域文化に対する深い愛情を持ち、秋田の文化を研究・発信したことは、地域文化研究のモデルとも言えるでしょう。

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