井上麻矢

井上麻矢氏は、1967年生まれ、劇作家として名高い井上ひさしと好子さんの三女です。東京都台東区柳橋で生まれ、千葉県市川市で育ちました。公立学校を経て文化学院高等部英語科に進学。在学中には、映画製作を志しフランスへ留学。パリで語学学校と陶器の絵付け学校に通い、芸術への情熱を育んでいました。

しかし、留学中には両親の離婚問題に巻き込まれ、寄宿舎に匿名の脅迫めいた手紙が届くなど、困難な時期も経験しています。帰国後、大学進学はせず大検に合格。その後は、ニューカレドニア文化交流協会などでアルバイトを経験し、スポーツニッポン新聞社に勤務していました。結婚を機に退社後、ホテル勤務などを経て、新たなキャリアを模索していました。

転機となったのは2009年。父である井上ひさし氏から誘いを受け、劇団こまつ座の経理担当者として入社しました。同年、父が癌を患っていることが判明。その年の11月、井上ひさし氏の急逝を受け、代表取締役社長に就任することとなりました。2児の母として、多忙な日々を送る中で、劇団こまつ座の運営を担っています。

彼女の多様な経験は、単なるビジネスウーマンとしての側面だけにとどまりません。2014年には市川市民芸術文化奨励賞を受賞するなど、芸術文化への貢献も高く評価されています。また、自身の経験を基にした著作活動も精力的に行っており、石川麻矢名義で『激突家族―井上家に生まれて』（中央公論社）、『夜中の電話 父・井上ひさし最後の言葉』（集英社）、山田洋次氏との共著『小説　母と暮せば』（集英社）、西舘好子氏との共著『女にとって夫とはなんだろうか』（ベストセラーズ）など、数々の書籍を発表しています。

これらの著作からは、著名な父を持つ娘としての葛藤や、激動の人生を歩んできた彼女自身の強さと繊細さが垣間見えます。2022年には、テレビ朝日『徹子の部屋』に赤塚りえ子氏と共にゲスト出演し、自身の経験や考えを広く世に知らしめました。

井上麻矢氏の歩みは、華麗な経歴というよりは、困難を乗り越えながら、自身の信念に基づいて道を切り開いてきた女性の生き様そのものです。劇団こまつ座代表取締役社長としての活躍、作家としての活動、そして母としての役割。彼女が今後どのように劇団を率いていくのか、そしてどのような作品を生み出していくのか、今後の活躍に期待が高まります。 父である井上ひさし氏の意志を継ぎ、演劇界に新たな風を吹き込む存在として、更なる飛躍が期待されています。

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