井口小夜子

井口小夜子（いぐち さよこ）

井口小夜子は、大正から平成にかけて活躍した日本の歌手です。1914年4月17日に東京市神田区（現在の東京都千代田区）で生まれ、2003年11月9日に89歳で亡くなりました。本名は田沼とみ子です。

経歴

東京神田の文具店に生まれた井口は、東京市立忍岡高等女学校時代に四家文子に師事。武蔵野音楽学校に進学後、大日本雄弁会講談社のレコード部（後のキングレコード）の歌手募集に応募し、「赤城の子守唄」を歌い合格。キングレコード専属歌手第1号となりました。

1935年（昭和10年）に童謡歌手として「ベゴニアの花」でデビュー。1939年（昭和14年）には武蔵野音楽学校本科声楽部を首席で卒業し、「乙女十八」で歌手デビュー。同年には「出征兵士を送る歌」の吹き込みにも参加し、その後は流行歌や軍国歌謡も歌いました。また、本名の井口とみ子の名義でクラシック歌曲の舞台にも立ち、キングレコードの音楽監督の助言でベルトラメリ能子の指導も受けています。

ラジオ体操の主題歌やラジオ歌謡など、NHKラジオとSPレコード全盛時代を代表する歌手として活躍し、民放テレビの開局期まで第一線で活躍しました。

1944年に結婚し、神奈川県藤沢市に移住。1947年には戦後を代表する童謡となる「みかんの花咲く丘」を発売。同年、自宅に「井口小夜子音楽研究所」を開設し、子供向けの音楽教室「キングさゆり会」で後進の育成にも努めました。

1954年には、NHKラジオ第1放送の連続放送劇「新諸国物語 紅孔雀」の主題歌「紅孔雀の歌」を歌い、大ヒットを記録しました。

1992年に設立された藤沢市芸術文化振興財団（現在の公益財団法人藤沢市みらい創造財団）の評議員を務め、地元の芸術文化の振興にも貢献しました。

井口小夜子は、童謡、流行歌、軍国歌謡、クラシック歌曲と幅広いジャンルを歌いこなし、ラジオを通じて多くの人々に歌声を届けました。戦後の歌謡界、特に童謡の世界において重要な足跡を残した歌手と言えるでしょう。

2003年11月9日、急性心不全のため逝去。89歳でした。

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