ベルトラメリ能子

ベルトラメリ能子（1903年4月1日 - 1973年8月2日）は、日本の声楽家であり、ソプラノ歌手として知られています。茨城県多賀郡平潟町（現在の北茨城市）で生まれ、旧姓は鐵（てつ）でした。8歳頃から東京で育ち、東京音楽学校（現在の東京芸術大学）を卒業後、アドルフォ・サルコリに師事しました。彼女は、同じく声楽家である三浦環の妹弟子としても知られています。

東京音楽学校卒業後は、高輪尋常小学校で教師を務めながら、作曲家の山田耕筰に師事し、音楽への情熱を深めました。1922年（大正11年）にはオペラ研究のためイタリアへ留学し、ナポリで3年間、その後ローマに移り住みました。ローマでは国立音楽学校で、オットリーノ・レスピーギに音楽理論を、ベリット・ド・ラビカらに声楽を学び、研鑽を積みました。

ローマ滞在中には、イタリアの詩人であるアントニオ・ベルトラメリと出会い、結婚しました。しかし、1930年（昭和5年）に夫と死別し、翌年の1931年（昭和6年）に一時帰国。日本コロムビアの専属歌手となり、独唱会を開催するなど精力的な活動を行いました。1932年（昭和7年）には再びイタリアへ渡り、1935年（昭和10年）に帰国しました。

帰国後は鎌倉に居を構え、ベルカント唱法の日本における普及に大きく貢献しました。また、後進の指導にも力を注ぎ、多くの声楽家を育てました。教育者としての活動も積極的に行い、1959年（昭和34年）には国立音楽大学の専任講師となり、1964年（昭和39年）には同大学の教授に就任しました。彼女の教育への情熱は、多くの学生に影響を与えました。

ベルトラメリ能子は、1973年（昭和48年）8月2日に、東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で生涯を閉じました。享年70歳でした。彼女の業績は、著作として残された『イタリア歌曲集』（音楽之友社、1956年 - 1958年）にも見ることができます。この書籍は、イタリア歌曲の研究において重要な資料となっています。

門下生には古関金子がおり、彼女の指導を受けた多くの声楽家が、その才能を開花させました。また、2020年には、NHK連続テレビ小説『エール』で、広岡由里子がベルトラメリ能子をモデルにした「ベルトーマス羽生」という役を演じ、その生涯がドラマ化されました。彼女の功績は、現在もなお語り継がれています。

ベルトラメリ能子は、その卓越した歌唱力と、ベルカント唱法の普及に対する貢献、そして教育者としての情熱を通じて、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。彼女の生涯は、音楽を愛するすべての人々に感動とインスピレーションを与え続けています。

もう一度検索