井坂康志

井坂 康志（いさか やすし）は、1972年に生まれた日本の経営学者です。現在はものつくり大学の教授として教鞭を執り、特にピーター・ドラッカーの経営学に関する研究で知られています。また、NPO法人ドラッカー学会の共同代表も務め、ドラッカー思想の日本における普及と学術的な発展に尽力しています。

井坂氏は埼玉県加須市（旧大利根町）に生まれ育ちました。國學院大學栃木高等学校を卒業後、早稲田大学政治経済学部へ進学し、さらに東京大学大学院人文社会系研究科社会情報学専攻の博士課程で単位を取得し退学。その後、商学の博士号を取得しています。研究者としてのキャリアを歩む前には、東洋経済新報社での勤務経験があり、経済・経営分野における知見を深めました。

現在は、ものつくり大学の教養教育センターに所属し、ドラッカー経営学研究室の教授を務めながら、図書館・メディア情報センター長も兼任しています。教育活動に加え、早稲田大学法学部では非常勤講師としても教壇に立っています。

井坂氏のキャリアにおける特筆すべき出来事として、2005年5月に経営思想家ピーター・ドラッカー本人に外国人編集者として最後となるインタビューを行ったことが挙げられます。この貴重な経験は、その後のドラッカー研究に大きな影響を与えました。同年には、ドラッカー研究の権威である上田惇生氏と共にドラッカー学会を設立。現在は佐藤等氏と共に共同代表を務め、学術的な研究集会や啓蒙活動を通じて、ドラッカー思想の現代社会における意義を探求し、その普及に貢献しています。

学術活動以外にも、多方面で社会貢献活動を行っています。一般財団法人石橋湛山記念財団の研究員として活動するほか、神奈川県相模原市の大規模事業評価委員会委員や、出身地である埼玉県加須市の行政経営懇談会委員なども務め、専門知識を活かして公共性の高い課題に取り組んでいます。

主な著作・編著には、ドラッカーに関する多くの専門書や入門書があります。代表的なものとしては、上田惇生氏との共著『ドラッカー入門 新版』、三浦一郎氏との共編著『ドラッカー――人・思想・実践』、単著『P.F.ドラッカー――マネジメント思想の源流と展望』、多田治氏との共著『ドラッカー×社会学』、『Drucker for Survival』、そして岩波新書より刊行された『ピーター・ドラッカーーー「マネジメントの父」の実像』などがあります。これらの著作を通じて、ドラッカーの思想を深く掘り下げ、現代の経営や社会課題との関連性を論じています。また、学術論文の共著や、地域研究として『大学的埼玉ガイド』の責任編集なども手掛けるなど、研究領域は多岐にわたります。

さらに、ドラッカー関連を中心に多くの翻訳書も刊行しており、海外の優れた研究や知見を日本に紹介する役割も担っています。翻訳書には、上田惇生氏監訳の『ドラッカーに学ぶ自分の可能性を最大限に引き出す方法』や、阪井和男氏、高木直二氏との共訳による『ドラッカー――教養としてのマネジメント』、ボブ・ビュフォードの著作『ドラッカーと私』『ハーフタイム』、バーバラ・ウォルターの『アメリカは内戦に向かうのか』などがあります。これらの翻訳活動は、ドラッカー研究および関連分野の発展に貢献しています。

経営学史学会賞の著書部門奨励賞（2019年度）を受賞しており、その学術的な業績は高く評価されています。研究者、教育者、そしてドラッカー思想の普及者として、現代社会におけるマネジメントや組織のあり方について探求を続けています。また、経営学や社会学に関する著作の傍ら、詩集も複数刊行しており、文学的な一面も持ち合わせています。

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