亜庭丸

亜庭丸の詳細

亜庭丸（あにわまる）は、1927年から1945年にかけて日本の鉄道省が運航した貨客船で、北海道の稚内と樺太の大泊を結ぶ稚泊航路において重要な役割を果たしました。その船名は樺太の亜庭湾に由来しています。特に、冬季には流氷で封鎖される海域での運行が求められたため、本格的な砕氷船として設計・建造されました。

建造の経緯

亜庭丸は、1925年12月に航行中の「対馬丸」が座礁し、損傷したことを受けて建造されました。鉄道省は代船を必要とし、1926年に新しく亜庭丸の建造を決定します。神戸製鋼所播磨造船所により、1927年2月28日に起工され、9月23日に進水した後、11月25日に竣工。12月4日に稚内港に到着し、8日から稚泊航路に運航を開始しました。

航海の出来事

航海中、亜庭丸は数々の出来事に遭遇します。1930年7月、箱館での修理を終えた亜庭丸は有志69名を乗せて利尻島と礼文島を回遊しました。また、1935年には「夏の利尻めぐり納涼船」として周遊運航が行われ、旅客輸送を担当しました。

1931年には氷盤に閉じ込められ、競争相手である「壱岐丸」を救援したこともあります。このように、悪天候や氷による困難な状況にもかかわらず、亜庭丸はその役割を果たし続けました。

1937年には流氷によって稚内への入港ができず、小樽へ向かうという出来事もありました。また、1942年には係船作業中に推進器翼を破損する事態に見舞われ、以降もたびたび故障やトラブルが報告されています。

救助活動

亜庭丸はまた、救助活動にも頻繁に関わりました。1929年には座礁した「西貢丸」の救助に携わり、1930年には漂流していた「千歳丸」を救出。1935年にはイギリス船「メーブルマラー」を救援するなど、さまざまな場面で利用されました。特に、1943年11月には遭難していた「菊島丸」の船員を救助するなど、船の機能をフル活用した活動を行いました。

沈没の経緯

しかし、1945年に入ると亜庭丸の運命は厳しくなります。7月23日、米軍機の空襲によって青函連絡船が壊滅状態になったため、亜庭丸は青函航路への転属を余儀なくされました。8月10日には青森県茂浦沖で機関故障が発生し、その後、米軍機の攻撃を受けて炎上、最終的に沈没しました。

沈没後、亜庭丸の船体の浮揚が試みられるも失敗し、そのまま廃棄されることになりました。このように、亜庭丸は多くの困難を乗り越えながらも、歴史的な航路において重要な存在であったことがわかります。

現在の亜庭丸

現在、稚内市の北方記念館には亜庭丸の模型が展示されているほか、過去には交通博物館や小樽交通記念館でも模型が見ることができました。また、亜庭丸をテーマにした職場対抗のスポーツイベントも行われており、その名は今も忘れられない存在です。

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