壱岐丸

壱岐丸（いきまる）

壱岐丸は、日本の海運史において重要な役割を果たした大型海峡渡船です。1905年（明治38年）9月11日に三菱合資会社三菱造船所で建造され、関釜航路の第一船として就航しました。この航路は、下関と釜山を結ぶもので、当時の日露戦争後の国際情勢に応じた日本の成長を象徴しています。

関釜連絡船としての役割

壱岐丸は、関釜連絡船航路の開設に応じて運行を開始しました。この航路は日本と朝鮮半島を結ぶ重要な交通手段となり、壱岐丸は東京と韓国の京城を結ぶ鉄道網との接続も担っていました。朝鮮半島と日本本土をつなぐこの航路は、当初は400トン程度の小型船舶を用いて航行されていましたが、壱岐丸の登場により、大型船の運航が実現したのです。

船体の特性

壱岐丸は、覆甲板と正甲板を持ち、当時の最先端技術を駆使した構造が特徴です。船内には1等、2等、3等の客室が設けられ、広い談話室や食堂も完備していました。特に1等区画は、採光が考慮された設計になっており、居心地の良い空間を提供していました。また、機関は三連成往復動汽機を使用しており、当時の技術革新の象徴でもありました。

航路の変遷と新たな役割

1922年には青函航路へと転属し、1924年からは稚泊航路の開設に携わりました。この航路は稚内と樺太大泊を結ぶもので、日本領土の拡大を背景に、新たな物流の重要性を持つ航路へと成長しました。壱岐丸はその運航中に、冬季の厳しい天候に見舞われることもしばしばありましたが、その他の船舶からの助けを得ながらその役割を果たし続けました。

売却と最後の航海

1932年には大阪商船に売却された後に琉球航路での運航を経て、北日本汽船に移籍し「樺太丸」と改称。1945年には青函航路に再び就航しましたが、終戦後は青森 - 室蘭間の航路で運航され、その生涯を1946年まで全うしました。壱岐丸は、その後解体されることになりましたが、その跡には多くの船舶と交流の歴史が残されました。

記念物としての存在

壱岐丸が使用されていた号鐘は1967年に鉄道記念物に指定され、現在は鉄道博物館で展示されています。このことは、壱岐丸の航海とその後の歴史に対する評価を示しており、日本の近代海運の重要な一部を今に伝えています。

壱岐丸の歴史は、国際情勢の変化に伴う日本の発展とともに歩んでおり、当時の人々の日常生活に深く根ざした存在であったことがわかります。その運航の経緯や技術革新により、今でも多くの人々に親しまれている船です。

もう一度検索