亜炭

亜炭について

亜炭（あたん、英: lignite）は、石炭の中でも石炭化が最も進んでいないタイプのものを指します。地質学的には褐炭に分類されることが一般的ですが、日本においてはその名称が特に行政的な理由から使用されています。

亜炭の特徴と性質

亜炭は褐炭と比較して色合いが幅広く、褐色から暗灰色のものが多いです。これは亜炭が成長過程の初期段階にあるため、植物の組織がそのまま観察できることがあります。特に、仙台市で採掘される亜炭の中には、木片の構造がしっかりと残っているものがあり、これらは加工されて細工物の原材料として利用されています。

世界全体の亜炭と褐炭の埋蔵量は、おおよそ6000億トン以上とされており、高品位の石炭に匹敵する規模を誇ります。日本国内でも多くの埋蔵量があり、特に東北地方では約3億トンが推定されています。

日本国内での利用状況

亜炭は質の面で褐炭と同様に、石炭化が不十分なため、水分や不純物を多く含み、得られる熱量も少ないことから、工業用途には適していません。明治時代から1950年代までは、全国各地での採掘が行われ、特に家庭用の燃料として重宝されました。特に戦争中やその直後、燃料の不足から仙台市や名古屋市などの大都市や中規模都市での採掘が盛んに行われました。

岐阜県可児郡御嵩町は明治初期から亜炭の採掘が進み、当時は全国の生産量の四分の一以上を占めていました。この町は一時期、おおいに栄えました。また、宮城県大崎市には三本木亜炭の産地があり、亜炭記念館には日本最大の亜炭塊が展示されています。

亜炭は不純物の影響から点火性が低く、燃焼時には独特の臭気を発し、大量の煤煙を生成するため、燃料の選択肢が増えると家庭や産業では早々に都市ガスや石油に切り替えられる傾向がありました。2000年代以降、日本国内での亜炭の使用はほとんど見られなくなり、現在では主に輸入された亜炭（褐炭を含む）が飼料添加物や土壌改良材として利用されています。

廃坑とその課題

ただし、亜炭の採掘後の廃坑問題も深刻です。適切な土砂の埋め戻しや水の注入が行われないと、地震などの際に重大な災害が引き起こされる恐れがあります。小規模な業者や個人による計画のない採掘が多く、採掘場所が不明瞭な地域も存在します。

例えば、御嵩町では1968年に採掘が終了しましたが、地下に広がる空洞の状況が不明のままで、陥没事故が発生し問題視されています。また、仙台でも幕末から小規模な採掘が続いていたものの、記録が残っていないため情報が乏しく、1980年代から住宅地での陥没事故が見られていますが、十分な対策が取られていないのが現状です。

結論

亜炭は日本の履歴において重要な役割を果たしつつある燃料源でありましたが、現在ではほとんどその姿を消しています。今後も、廃坑問題への対処や未開発地域の管理が急務とされています。

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