交通船2121号型

海上自衛隊の港湾輸送を支える2121号型交通船

海上自衛隊の港湾活動において重要な役割を担うのが、2121号型交通船です。この支援船は、25トン型交通船という公称船型を持ち、主に各港務隊に配備されています。その任務は、港湾内における人員（主に曹士）と物資の輸送です。

2121号型交通船の設計は、輸送艦に搭載される上陸用舟艇（LCM）を基に拡大発展したものです。鋼鉄製の船体に、船首にはバウ・ランプという船の入り口兼搬入口を備え、アメリカ海軍のLCM(6)型と同等の性能を有しています。幹部の人員輸送には、より小型でボート型の交通船が用いられる点は特筆すべきでしょう。

2003年には、2121号型を拡大した設計の2150号型交通船（55総トン、全長19.8m）が2隻就役し、呉基地のLCAC基地に配備されました。2150号型は、輸送艦であるおおすみ型への搭載と上陸用舟艇としての運用も可能という特徴を持っています。おおすみ型輸送艦は、LCAC（エア・クッション型揚陸艇）の運用を前提に設計されているため、ドックへの注水深度が浅くなっています。そのため、2150号型はスクリュー推進ではなく、ウォータージェット推進を採用している点が技術的な注目点と言えるでしょう。

人員輸送を主任務とする交通船とは別に、海上自衛隊では物資輸送を主任務とする運貨船にもLCMタイプが建造されています。その代表例が、アメリカ海軍のLCM(8)型に相当する50トン型運貨船である9号型です。この9号型は、7隻が現在も運用されています。これらの船舶は、港湾における円滑な物資輸送を支える上で欠かせない存在です。

2121号型交通船は、一見すると小さな船舶ですが、海上自衛隊の港湾活動を支える上で非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。その設計思想や運用方法、そして派生型を含めた多様なバリエーションは、日本の防衛力の維持に貢献する、重要な要素の一つなのです。 また、これらの交通船は、平時における災害派遣など、多様な場面でも活躍できるポテンシャルを秘めている点も見逃せません。

関連する艦艇

輸送艇1号型: LCU型輸送艇。2121号型と比べてはるかに大型であり、自衛艦籍に属しています。
LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇: アメリカ製のエア・クッション型揚陸艇。海上自衛隊でも運用されており、おおすみ型輸送艦には通常このLCACが搭載されます。
大発動艇: バウ・ランプを備えた、旧日本軍の上陸用舟艇。2121号型と同様に、上陸作戦において重要な役割を果たしていました。

参考文献

石原造船所「年度末に就役した海上自衛隊の支援船」『世界の艦船』第497集、海人社、1995年6月、16頁。
『自衛隊装備年鑑2010-2011』朝雲新聞社　2010年
『海上自衛隊　艦艇と航空機集（平成19年度版）』海上自衛隊新聞社　2007年
* 『J-SHIPS』VOL.55 イカロス出版　2014年.ASIN B00HY8GKSW

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