交響曲第1番 (ジェイガー)

アメリカの作曲家、ロバート・ジェイガー（Robert Jager, 1939-）が手掛けた「吹奏楽のための交響曲（Symphony for Band）」は、吹奏楽のために書かれた彼にとって初めての交響曲作品です。

この楽曲は1963年の秋に作曲が完了し、翌1964年には吹奏楽曲に贈られる権威あるオストウォルド賞を受賞しました。これは、その作曲の質の高さを証明する出来事と言えるでしょう。楽曲は、初演の際にタクトを執ったギルバート・ミッチェル大尉に献呈されています。編成としては、一般的なコンサートバンドの規模を想定して書かれており、多くの吹奏楽団にとって演奏可能な構成となっています。

作品は当初「吹奏楽のための交響曲」という表題で出版されましたが、その後1976年に東京佼成ウインドオーケストラからの委嘱を受けて「交響曲第2番『三法印』」が作曲されたことにより、区別のために「交響曲第1番」という通称で広く親しまれるようになりました。

全4楽章で構成されており、伝統的な交響曲の形式を踏襲している点も特徴の一つです。各楽章には以下のような楽想が指定されています。

第1楽章：Andante espressivo - Allegro - Andante
第2楽章：Alla marcia
第3楽章：Largo espressivo
第4楽章：Allegro con fuoco - Andante - Allegro molto vivace

緩徐楽章やスケルツォに相当する楽章、そして力強いフィナーレが配置され、音楽的な対比と統一感を持っています。

この作品の世界初演は、作曲された翌年の1964年6月9日、アメリカのワシントンD.C.で行われました。指揮は献呈相手でもあるギルバート・ミッチェル大尉が務め、アメリカ陸軍軍楽隊が演奏を担当しました。日本においては、1967年6月8日に東京文化会館で日本初演が実現しています。この時の指揮は山本正人が担当し、東京芸術大学音楽学部吹奏楽研究部によって演奏されました。

演奏時間は、約23分程度とされています。この時間の中に、多様な音楽的要素が凝縮されています。

楽譜の出版に関しては、初版が1964年にアメリカの出版社であるヴォルクワイン社（Volkwein Bros. Inc.）から刊行されました。この初版は、全曲を3分冊に分けて出版されるという形式が取られていました（第1楽章、第2・第3楽章、第4楽章）。長らく絶版の状態が続き、容易に入手できない時期がありましたが、2013年にウィンズスコア社から復刻版が出版され、再び多くの吹奏楽団がこの名作に取り組めるようになりました。

「吹奏楽のための交響曲」は、ロバート・ジェイガーの初期の代表作であり、吹奏楽のオリジナル作品として現在も世界中で演奏され続けている重要なレパートリーです。その構築的な構成と豊かな響きは、多くの奏者や聴衆に感銘を与えています。

もう一度検索