交響曲第1番 (橋本國彦)

交響曲第1番 ニ長調について

橋本國彦の交響曲第1番 ニ長調は、1940年（皇紀2600年）の奉祝曲として作曲されました。この年は、日本で盛大な記念式典が開催され、国内外の音楽家たちに祝典曲の作曲が依頼されました。この交響曲もその一つで、建国祭本部からの要請によって制作されました。

この作品は、平易で親しみやすい旋律が特徴ですが、プロパガンダ的な要素が強かったため、戦後長い間、演奏されることがありませんでした。初演は1940年6月11日に日比谷公会堂で、作曲者自身の指揮、東京音楽学校管弦楽団によって行われました。

その後、オーケストラ譜は長らく行方不明となっていましたが、1980年代に発見され、第2楽章がNHKの「音楽の広場」やテレビ朝日の「題名のない音楽会」で相次いで放送されました。これらの番組で演奏されたのは、放送用に中間部を短縮したものでしたが、第2楽章の魅力は十分に伝わりました。しかし、当時、第1楽章と第3楽章については解説されませんでした。

2002年には、ナクソス・レーベルの「日本作曲家選輯シリーズ」で、沼尻竜典指揮、東京都交響楽団演奏によるCDが発売され、この作品の真価が改めて認識されることとなりました。

楽曲構成

この交響曲は、三管編成のオーケストラで演奏され、演奏時間は約40分です。

第1楽章：マエストーソ・モデラート

ゆっくりとしたカノンで始まり、ヴァイオリンによる第1主題と、オーボエとフルートによる第2主題が提示されます。その後、勇壮な行進曲が挿入され、後半では第1、第2主題が再現されます。最後はチェレスタの音色とともに静かに終わります。

第2楽章：アレグレット・スケルツアンド・アレグレット

ゆったりとしたジャワ風の旋律が繰り返される部分と、細かい音符が速く演奏される中間部から構成されています。旋律が繰り返される部分は、ラヴェルの「ボレロ」を連想させます。旋律のクライマックスでは太鼓が加わりますが、実際の演奏では日本太鼓や琉球のパーランクーが用いられることもあります。橋本自身は、この主題を自著で琉球音階の使用例として紹介しています。また、「音楽の広場」で紹介された際には、「琉球音階を使った楽曲」として演奏されました。

第3楽章：主題と変奏とフーガ：モデラート

伊沢修二が作曲した「紀元節」の旋律を主題とした8つの変奏が展開されます。最後には、第1楽章のカノン、同じく第1楽章の第1主題、「紀元節」の主題によるフーガが壮大に演奏され、曲を締めくくります。

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