交響曲第3番 (ジャンニーニ)

ヴィットリオ・ジャンニーニ：交響曲第3番（吹奏楽のための）

ヴィットリオ・ジャンニーニ（Vittorio Giannini, 1903-1966）が作曲した《吹奏楽のための交響曲第3番》（Symphony No.3, for Band）は、吹奏楽編成のために書かれた数少ない本格的な交響曲作品として、今日でも広く演奏され、親しまれています。

この楽曲は1958年に誕生しました。作曲のきっかけとなったのは、デューク大学吹奏楽団とその指揮者であったポール・ブライアンからの委嘱です。ジャンニーニはこの依頼を受けて、当時休暇を過ごしていたイタリアのローマで筆を進めました。彼の創作活動において、本作は5曲ある交響曲の中で唯一、吹奏楽のために書かれたものであり、ゴールドマン・バンドのために作曲された「前奏曲とアレグロ」に続く、彼の吹奏楽作品としては2作目にあたる重要な位置を占めています。

《交響曲第3番》は、ジャンニーニの作品群の中でも特に演奏機会や録音が多く、吹奏楽の世界では欠かせない重要なレパートリーの一つとして高い評価を受けています。作品全体は、伝統的な4つの楽章構成を採用しており、特定の物語や情景を描写するような標題的な要素は持たない純粋な音楽として構築されています。そこには、ジャンニーニの音楽家としての特質である、歌心溢れる表情豊かな旋律、クリアで分かりやすい和声、そして楽想を巧みに発展させていく動機展開への深い関心が如実に反映されています。

楽章間の関連性を示す循環形式は用いられていませんが、楽曲全体を通して、作曲家が特定の音程、特に完全四度音程を好んで効果的に使用している点が特徴として挙げられます。この音程が、作品に統一感と独特の響きを与えています。

全4楽章から構成され、全曲の演奏時間は概ね25分程度です。各楽章の構成は以下の通りです。

1. 第1楽章 Allegro energico
2/2拍子、変ロ長調。
形式：ソナタ形式。
力強く活気あふれる楽章で、作品全体の幕開けを飾ります。

2. 第2楽章 Adagio
4/4拍子、変イ調。
形式：三部形式。
緩やかなテンポで、叙情的かつ深みのある音楽が展開されます。表情豊かな旋律が際立つ楽章です。

3. 第3楽章 Allegretto
3/4拍子および6/8拍子、変ロ短調。
形式：二部形式（A-B-A-B'）を基調としています。
軽快なテンポで、拍子が変化しながら進みます。リズミカルで色彩感豊かな楽章です。

4. 第4楽章 Allegro con brio
4/4拍子、変ロ長調。
形式：ソナタ形式。
速く、生き生きとした楽章で、再び変ロ長調に戻り、華々しく楽曲を締めくくります。

ヴィットリオ・ジャンニーニの《吹奏楽のための交響曲第3番》は、その確かな構成力と、吹奏楽という編成の特性を活かした豊かな響きによって、作曲から半世紀以上を経た今もなお、多くの演奏者や聴衆に愛され続けている名作と言えるでしょう。

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