交響曲第49番 (ハイドン)

交響曲第49番 ヘ短調 Hob. I:49 "受難"

フランツ・ヨーゼフ・ハイドンによって1768年に作曲された交響曲第49番ヘ短調は、特に「受難」という愛称で広く知られています。この作品は、ハイドンの「シュトゥルム・ウント・ドラング」期に属し、彼の短調の交響曲の中でも重要な位置を占めています。

概要

この交響曲は、ハイドンの創作による自筆原稿に基づいて1768年に作曲されたことが確認されています。「受難」という名称は、現在では広く受け入れられていますが、ハイドン自身がこのタイトルを名付けたわけではありません。一部の音楽学者、例えばH.C.ロビンス・ランドンや大宮真琴は、この曲のタイトルが第26番"ラメンタチオーネ"に類似した「受難交響曲」に由来するとしています。しかし歴史的には、エレーン・シスマンによれば、かつては「陽気なクエーカー教徒」という別の名称で呼ばれていたことが示されています。

さらに、音楽学者のジェームズ・ウェブスターは、「受難」という愛称が必ずしも正当ではないことを指摘し、受難週や復活祭に関連する証拠が存在しないと述べており、むしろ劇付随音楽からインスパイアされた可能性を示唆しています。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器から構成されています：

• - オーボエ2
• - ホルン2
• - 第1ヴァイオリン
• - 第2ヴァイオリン
• - ヴィオラ
• - 低音（チェロ、ファゴット、コントラバス）

曲の構成

交響曲第49番は全4楽章で、演奏時間は約20分です。ハイドンの作品としては、緩徐楽章から始まる教会ソナタ風の構成を持つ最後の短調の交響曲であり、すべての楽章が同じヘ短調で統一されています。

第1楽章 アダージョ

初めに静けさの中で展開されるこの楽章は、ヘ短調の4分の3拍子で構成されており、ソナタ形式をとっています。

第2楽章 アレグロ・ディ・モルト

この楽章は、ヘ短調の4分の4拍子で、再びソナタ形式が用いられています。提示部は、ヴァイオリンが特徴的な跳躍音程の主題を演奏し、すぐに変イ長調に転調します。展開部も長調からスタートし、構造は概してシンプルです。

第3楽章 メヌエット - トリオ

この楽章はヘ短調からヘ長調に転調し、4分の3拍子で書かれています。メヌエットの冒頭3音は第1楽章の主題と同様であり、トリオ部分はヘ長調に変わります。

第4楽章 フィナーレ：プレスト

最後の楽章はヘ短調で、2分の2拍子（アラ・ブレーヴェ）で演奏され、ソナタ形式を取っています。この楽章では弦楽器が主要な役割を果たし、管楽器は和音を支える役割がほとんどです。再現部の直前には、オーボエが主題を8小節間演奏する部分が特に印象的です。

参考文献

本交響曲に関する詳細な情報は、以下の文献を参照ください：

• - 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社、1981年。
• - 『ハイドン 交響曲集IV（41-49番） OGT 1592』音楽之友社、1982年。
• - Sisman, Elaine (1990). “Haydn's Theater Symphonies”. Journal of the American Musicological Society 43 (2): 292-352.

外部リンク

交響曲第49番 ヘ短調 Hob. I:49『受難』の楽譜) - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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