交響曲第5番 (スタンフォード)

交響曲第5番 ニ長調 作品56

チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードが1894年に完成させた交響曲第5番 ニ長調 作品56は、演奏時間約43分を要する規模の大きな作品です。この交響曲は、英国の詩人ジョン・ミルトンの詩集『陽気な人（L'Allegro）』と『内省的な人（Il Penseroso）』に深く触発されて生み出された作品として知られています。

概要

本作の初演は、作曲から間もない1895年3月20日、ロンドンのクイーンズ・ホールにて行われました。作曲者スタンフォード自身が指揮を執り、フィルハーモニック協会管弦楽団が演奏を担当し、聴衆から温かい喝采をもって迎えられ、好評を博しました。しかし、楽譜が出版されるまでには長い年月を要し、初演からほぼ30年後の1923年になってようやく日の目を見ることとなりました。作品はフィルハーモニック協会に献呈されています。

スタンフォードは各楽章にミルトンの詩からの引用を付しており、作品に込められた詩的な意図を示唆しています。

楽曲構成

この交響曲は伝統的な4つの楽章で構成されています。

第1楽章：アレグロ・モデラート

勇壮なニ長調の序奏で始まり、この主題は第3楽章にも現れます。主部では多様な楽想が展開されます。

第2楽章：アレグロ・グラツィオーソ

ホルンによる牧歌的な旋律が特徴で、短い中間部を含みます。

第3楽章：アンダンテ・モルト・トランクウィロ

静かで穏やかな雰囲気。中間部では木管楽器がナイチンゲールの歌声を思わせるフレーズを奏でます。第1楽章序奏の回想も聞かれます。

第4楽章：アレグロ・モルト

冒頭の鐘のような和音に続き、決然たる主題が提示されます。終盤、オルガンのコラールを経て壮大なクライマックスを築き、静かに全曲を閉じます。

この交響曲第5番は、スタンフォードの交響曲の中でも詩的な感性が際立つ作品です。

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