チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード

サー・チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード

アイルランド出身の多才な音楽家、サー・チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード（1852-1924）は、作曲家、教師、そして指揮者として、ヴィクトリア朝後期からエドワード朝にかけてのイギリス音楽界に大きな足跡を残しました。彼はダブリンの音楽的な家庭に生まれ育ち、ケンブリッジ大学で学ぶ傍ら、ドイツのライプツィヒやベルリンでも音楽の研鑽を積みました。その教育的背景と才能により、ケンブリッジ大学の音楽部（CUMS）の活性化に貢献し、国際的な演奏家を招聘してその地位を高める立役者となりました。

スタンフォードは大学在学中にトリニティ・カレッジのオルガン奏者に任じられ、1882年には29歳という若さで王立音楽大学（RCM）の創設メンバーとして作曲科教授に就任しました。この職は彼が亡くなるまで続けられ、1887年からはケンブリッジ大学の音楽科教授も兼任しています。教育者として、彼は厳格な指導スタイルと古典的な音楽原理（特にブラームスに範をとる）を重視し、モダニズムには懐疑的な立場を取りました。彼の門下からは、グスターヴ・ホルスト、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ、ジョン・アイアランド、フランク・ブリッジ、アーサー・ブリスといった、後に彼自身の名声をも凌ぐ作曲家たちが数多く輩出されました。

作曲家としては非常に多作であり、7つの交響曲、9つのオペラ、多数の合唱曲や室内楽曲、歌曲などを手がけました。中でも聖公会の伝統に根ざした教会音楽は高く評価されており、現在でも演奏機会が少なくありません。オペラにも精力的に取り組みましたが、その9つの作品は残念ながら広くレパートリーとして定着しませんでした。スタンフォードは、パリーやマッケンジーらと共に、「イギリス音楽のルネサンス」の主要人物と見なされることがあります。19世紀末の20年間は目覚ましい成功を収めましたが、20世紀に入るとエドワード・エルガーや自身の弟子たちの台頭により、次第にその存在が霞んでいくことになります。

指揮者としても活躍し、ロンドンのバッハ合唱団（1885-1902）やリーズ音楽祭（1898-1910）の常任指揮者を務めました。リーズ音楽祭ではヴォーン・ウィリアムズの《海の交響曲》など、後進の重要な作品の初演を手掛けています。

私生活では、ライプツィヒで出会ったジェーン・アンナ・マリア・ウェットン（ジェニー）と結婚し、一男一女をもうけました。人間関係においては、時に癇癪持ちで論争好きな一面も見せ、友人であったパリーや、かつて支援したエルガーとの間に摩擦が生じることもありました。

第一次世界大戦はスタンフォードの晩年に暗い影を落としました。空襲の恐怖に悩まされ、教え子たちの戦死や負傷に心を痛め、収入も減少しました。戦後、公の場での指揮活動は徐々に若手に引き継がれますが、教育活動は続けました。最晩年には若い世代の音楽に対する敵意を公然と表明しています。1922年に完成した6つの《アイルランド狂詩曲》が最後の作品となりました。1924年に脳卒中で倒れ、ロンドンでその生涯を終えました。遺灰はウェストミンスター寺院に埋葬され、ヘンリー・パーセルらの偉大なイギリスの音楽家たちと並んで静かに眠っています。

彼の死後、教会音楽以外の多くの作品は顧みられなくなりましたが、近年はCD録音の増加により再評価の動きが見られます。技術的な完成度の高さは生前から広く認められていましたが、バーナード・ショーをはじめとする批評家からは、音楽における情熱や劇的な感情の不足を指摘されることもありました。特にオペラにおいては、その評価は現在も分かれています。

主要な作品としては、前述の交響曲やオペラ、教会音楽（礼拝音楽、モテット、レクイエムなど）、管弦楽曲（アイルランド狂詩曲）、協奏曲、室内楽曲、歌曲（「青い鳥」を含む）などが挙げられます。彼の音楽は演奏会で取り上げられる機会は少ないものの、多くの作品が録音されており、その芸術的な達成を探求することが可能です。著書としては、音楽に関する論考も発表しています。

サー・チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードは、イギリス音楽史において、教育者として多くの才能を育て、作曲家として膨大な作品を残し、指揮者として新たな音楽を紹介した、多面的な功績を持つ人物として記憶されています。

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