交響曲第5番 (ヴィラ＝ロボス)

エイトル・ヴィラ＝ロボスが作曲した交響曲第5番「平和」（A Paz）は、公式記録によれば1920年に書かれたとされる作品です。これは、ヴィラ＝ロボスが構想した第一次世界大戦の終結を記念する標題的三部作の最終楽章にあたり、ブラジルの文筆家ルイス・ガスタン・デスクラニョール・ドリアの論考に影響を受けていると言われています。また、この交響曲は、作曲家ヴァンサン・ダンディの音楽様式を模倣したとされる一連の交響曲5作品群の最後を飾るものとしても位置づけられています。

しかしながら、この第5交響曲は実際に演奏される機会がなく、その総譜は現在失われてしまっています。過去には、1961年3月5日にニューヨークのカーネギー・ホールで、指揮者エレアザール・デ・カルヴァーリョとニューヨーク・フィルハーモニックによって演奏されたとする記録が存在しましたが、その後の調査でこのプログラムは事実ではなかったことが判明しています。ヴィラ＝ロボス博物館がデ・カルヴァーリョ本人に確認したところ、彼は第5番の総譜の写しを手にしたことは一度もなく、該当する演奏会も開催されていないと証言しています。実際には、同日、カーネギー・ホールではデ・カルヴァーリョが指揮するニューヨーク・フィルハーモニックの団員たちによるヴィラ＝ロボスの作品のみで構成された記念コンサートが行われていました。そのプログラムには『Madonna Fantasia』、チェロ協奏曲イ短調、『ブラジル風バッハ』第5番、『ウイラプルー』などが含まれていましたが、交響曲第5番に関する言及は一切ありませんでした。

この作品に関しては、作曲年や正式な題名についても研究者間で意見が分かれています。例えば、音楽学者リサ・ペッパーコーンは、この交響曲が1920年に完成されたとする説に疑問を呈しており、1946年になってようやく作曲の構想が進められたに過ぎないと見ています。さらに、1965年6月30日に出版されたリコルディ社のヴィラ＝ロボス作品カタログには、「Odisséa da Paz」（平和のオデュッセイア）という題名で掲載され、作曲年も1921年と記されています。一方、デイヴィッド・アップルバイは、この「Odisséa da Paz」という題名自体が交響曲第7番の副題である可能性を指摘しています。

構想されていた楽曲は全4楽章で構成される予定でした。

1. Allegro
2. Scherzo
3. Moderato
4. Allegro grandioso

ヴィラ＝ロボス自身が1928年か1929年頃に音楽ジャーナリストのスザンヌ・デマルケスに語ったところによると、当時まだ演奏されていなかった第5交響曲では、過去に書かれた2つの交響曲と同様に、管弦楽編成に加えて木管楽器によるバンドが加わる予定でした。さらに特徴的なのは、ロシア語、中国語、アフリカの言語など、様々な言語から借用した意味を持たない音節を歌う混声合唱を導入する構想があったことです。このような非言語的なテクストの使用は、音素やリズムが純粋に音楽的な効果に与える影響を探求することを目的としており、彼は後に作曲される九重奏曲やショーロス第10番の合唱パートでも同様の手法を用いています。

総譜が失われた今、交響曲第5番「平和」は、その構想と断片的な情報のみが残る、作曲家の創造の一端を示す作品となっています。

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