交響曲第6番 (ヴィラ＝ロボス)

エイトル・ヴィラ＝ロボスが1944年に作曲した交響曲第6番は、『ブラジルの山の山稜』（Sobre a linha das montanhas do Brasil）という副題を持つ作品です。この交響曲はブラジルのリオデジャネイロで誕生し、作曲者自身の指揮のもと、1950年4月29日に同地の市立劇場管弦楽団によって初演されました。ヴィラ＝ロボスはこの作品を、彼の妻であるミンディーナに献呈しています。

なお、初期の記録には、1928年から1929年にかけてのヴィラ＝ロボスとの会話に基づき、ブラジルの先住民音楽の主題を用いた「Symphonie indienne」が第5番の直後に書かれた6番目の交響曲として言及されたことがありますが、ヴィラ＝ロボスの公式作品目録には、そのような作品として現在認識されているものはありません。

本作で特筆すべきは、その主要主題の生成方法です。作曲家はブラジルの都市ベロオリゾンテ周辺に連なる山々のシルエットをグラフ用紙の上に投影し、その稜線から得られた線を音高の連なり、つまり旋律へと変換するというユニークな手法を用いました。ヴィラ＝ロボスはこの技法を「グラフ化」（milimetrazação）と呼び、英語では「millimetrization」または「milmeterization」と表現されることがあります。この手法は、同時期に作曲された「New York Skyline」という作品でも用いられており、山並みから生成された旋律は、「New Music」誌の1942年10月号に掲載されたブラジル人作曲家特集号において、ピアノのための和声付けされた版として初めて公表されました。

楽曲は全4楽章構成で、演奏時間はおよそ26分半です。各楽章は以下の速度記号によって示されます。

• - 第1楽章: Allegro non troppo
• - 第2楽章: Lento
• - 第3楽章: Allegretto quasi animato
• - 第4楽章: Allegro

楽章構造を見ると、特に第1楽章は標準的なソナタ形式からはやや外れており、ヴィラ＝ロボスがしばしば用いたように、再現部において第2主題が省略されています。全体の調性的な中心はハ長調にありつつも、部分的にはニ長調やト長調といった関連する調性域が顔を覗かせます。

第2楽章では、特定の音を意図的に省略することで、その省略された音への聴き手の注意を引きつけるという技法が見られます。例えば、ほぼ無調的な響きを持つ33小節から47小節にかけてのパッセージでは、クラリネットが独奏で11の半音階的な音を繰り返しながら長い旋律を紡いでいきますが、ここではト音だけが使われていません。そして、その後の47小節目でヴィオラが加わる際に、この省略されていたト音が決然と導入されることで、それまでの不在が強調され、聴覚的なインパクトを生み出しています。

この作品のためにヴィラ＝ロボスは大規模なオーケストラを編成しました。楽器には、ピッコロ2、フルート3、オーボラ2、コーラングレ、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴットといった木管楽器群、ホルン4、トランペット4、トロンボーン4、チューバから成る金管楽器群が含まれます。さらに打楽器としてティンパニ、タムタム、大小さまざまなスネアドラム、インディアンドラム、シンバル、ヴィブラフォンが用いられ、チェレスタ、2台のハープ、そして標準的な弦楽五部（ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）が加わります。このような多彩な楽器編成が、山並みから生まれた旋律と組み合わさることで、ヴィラ＝ロボスならではの豊かな音響世界を創り上げています。

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