コントラファゴット

コントラファゴット：低音を支える重厚な響き

コントラファゴットは、ファゴットと同様にダブルリード（複簧）を使用する木管[[楽器]]です。ファゴットの約2倍の管長を持ち、1オクターブ低い音域を奏でることから、「コントラバスーン」や「ダブルバスーン」とも呼ばれます。オーケストラや吹奏楽において、木管[[楽器]]群の最低音を補強する重要な役割を果たしています。

特徴と音域

コントラファゴットは、その長い管長（約6メートル）ゆえに、管を4回折り曲げた構造をしています。楽器自体も約6kgと重く、演奏時にはエンドピンやストラップを使用して支えるのが一般的です。リードはファゴットのものよりも一回り大きく、振動面が広くなっています。

音域は、一般的なピアノの最低音よりも半音高い変ロ音から、上方へ約3オクターブです。ファゴット奏者が演奏することが多く、指使いはファゴットとほぼ同じですが、1オクターブ低い音が出ます。そのため、移調楽器として記譜されることが多いです。ただし、ワーグナーやドビュッシーの作品など、実音表記されるケースもあります。楽器によっては、最低音がさらに拡張され、イ音や変イ音まで出すことが可能です。

音楽における役割

オーケストラでは、中規模以上の編成で用いられることが多く、近現代の管弦楽曲では日常的にその姿を見ることができます。吹奏楽でも、大規模な編成の楽曲で採用されることがあります。

コントラファゴットは、低音域を支えるだけでなく、その豊かな響きによって楽曲に深みと迫力を与えます。ブラームスの交響曲第1番のように、低音を効果的に用いた作品では、コントラファゴットの存在が際立ちます。

歴史的には、ベートーヴェンの交響曲第8番の初演時に、スコアに指定がないにもかかわらず、2人のコントラファゴット奏者が参加した記録が残っています。また、室内楽では、古典派時代のハルモニームジークで、指定の有無にかかわらず日常的に使用されてきました。モーツァルトの『グラン・パルティータ』では、コントラバスの代わりにコントラファゴットが用いられることもあります。

コントラフォルテ

コントラファゴットの改良型として、ドイツのヴォルフ社が開発したコントラフォルテがあります。これは、通常のコントラファゴットよりもさらに低いイ音を最低音とし、4オクターブ半という広い音域を持ちます。また、高音域が痩せる傾向にある通常のコントラファゴットに対し、全音域でほぼ一様な音質を保ち、ダイナミクスレンジも広いという特徴があります。コントラフォルテは、ベネディクト・エッペルスハイム管楽器でも製造されています。

歴史

コントラファゴットは、17世紀中ごろに開発され、当初は長大なファゴットのような形状をしていました。現存する最古のものは1714年製で、3つのキーを備えています。バッハやヘンデル、ハイドン、モーツァルトなどの作品にも用いられていますが、交響曲での初出はベートーヴェンの交響曲第5番の終楽章です。その後、様々な楽曲で用いられるようになりましたが、音量や表現力に課題があり、代用楽器で演奏されることもありました。

19世紀後半には、ヘッケルによって改良が加えられ、キーの追加やチューニングスライドの導入によって音量や表現力が向上し、現在の形状に近いものになりました。2001年には、フォックスがオクターブキーなどをさらに改良したシステムを導入し、特許を取得しました。カレヴィ・アホのコントラファゴット協奏曲は、この改良されたシステムを前提に作曲されており、従来の楽器での演奏は困難とされています。

コントラファゴットのための作品や、専門の演奏家は少ないですが、スーザン・ニグロのような演奏家が、積極的に活動を行っています。

主な楽曲例

コントラファゴットは、大編成のオーケストラでは頻繁に用いられますが、ソロはあまりありません。以下に、ソロや目立つ部分がある作品をいくつか挙げます。

ベートーヴェン: 交響曲第5番（第4楽章）、交響曲第9番（第4楽章）
ラヴェル: 左手のためのピアノ協奏曲（冒頭ソロ）、組曲「マ・メール・ロワ」より「美女と野獣の対話」、スペイン狂詩曲、道化師の朝の歌
デュカス: 「魔法使いの弟子」
リヒャルト・シュトラウス: 歌劇「サロメ」、交響詩「ドン・キホーテ」
マーラー: 交響曲第2番（第5楽章）、交響曲第6番（第2楽章）、交響曲第7番（第2,3楽章）、交響曲第9番（第2,4楽章）、「大地の歌」（最終楽章）
ホルスト: 組曲「惑星」より「天王星」
ベルク: オペラ「ヴォツェック」（第1幕）
ストラヴィンスキー: バレエ音楽「春の祭典」、「火の鳥」
ショスタコーヴィチ: オペラ「鼻」、バレエ音楽「黄金時代」、オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」、交響曲第5,7番、ヴァイオリン協奏曲第1番
矢代秋雄: 交響曲（第4楽章）
* ヴェーベルン: 6つの小品

吹奏楽曲では、コントラファゴットは稀にしか指定されませんが、コントラバス・サリュソフォーンの代用として使われることがあります。アルフレッド・リード、ボブ・マーゴリス、ジェイムズ・バーンズ、フローラン・シュミット、アラン・ホヴァネス、ジョン・マッキーなどの作曲家の作品で、その存在を確認することができます。

協奏曲としては、アホ、ムラディアン、ドーフ、モンターノ、ブルンスらの作品が挙げられます。また、シュルホフやヴィリー・ヘスによる独奏曲も存在します。

映画音楽では、1954年の「ゴジラ」や「ジョーズ」などの作品で、その重厚な響きが効果的に使用されています。

主なメーカー

コントラファゴットの主なメーカーとしては、アマティ（チェコ）、フォックス（アメリカ）、モーレンハウエル（ドイツ）、ピュヒナー（ドイツ）、ヘッケル（ドイツ）、モースマン（ドイツ）、シュライバー（ドイツ）、アドラー（ドイツ）、ソノーラ（旧東ドイツ）、メーニッヒ（ドイツ）などがあります。

コントラファゴットは、その低音域を支える重要な楽器として、オーケストラや吹奏楽に欠かせない存在です。その豊かな響きは、楽曲に深みと迫力を与え、聴衆を魅了します。

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