京兆地方

京兆地方：北京周辺を治めた短命の行政区画

1913年から1928年まで存在した京兆地方は、中華民国北京政府によって設置された、北京周辺を管轄する省級行政区画でした。清代には北京近郊の24県は順天府に属し、直隷総督の監督下にあったものの、中華民国建国後、北京が首都となると、その近郊の重要地域としての位置づけが強まりました。

成立と行政機構

1913年、北京政府は『画一現行順天府属地方行政官庁組織令』を公布し、清代の順天府を踏襲する形で京兆地方が誕生しました。ただし、行政、司法、財政の権限は直隷省から完全に分離され、独立性を高めました。当初は順天府に属していた24県のうち、寧河、文安、新鎮、大城の4県は、府尹（順天府長官）から遠く離れていることを理由に、直隷省に移管されました。

同年10月4日、『京兆尹官制』が発布され、順天府は正式に京兆地方と改称され、他省と同等の行政権限を持つ行政区画となりました。京兆尹公署が北京城区に設置され、行政を担いました。しかし、京兆尹の地位は、他省の行政長官である巡按使よりも低い地位に位置づけられていた点が特徴的です。

同日発表された『京兆地方区画表』によると、京兆地方は、大興、宛平、良郷、固安、永清、安次、香河、三河、覇県、涿県、通県、薊県、昌平、武清、宝坻、順義、密雲、懐柔、房山、平谷の20県を管轄下に置いていました。これらの県は、北京の政治・経済・文化圏に属する地域であり、首都周辺の安定維持に重要な役割を果たしていました。

廃止とその後

京兆地方は1928年に廃止され、その管轄区域は河北省に移管されました。わずか15年間の歴史でしたが、中華民国初期の北京周辺の行政体制を知る上で、重要な役割を果たした行政区画と言えるでしょう。その短命さには、複雑な政治情勢や、軍事的な影響なども絡んでいたと考えられます。

管轄県一覧

京兆地方が廃止される直前まで管轄していた20県を五十音順に以下に示します。

安次県
宛平県
永清県
懐柔県
薊県
固安県
香河県
三河県
順義県
昌平県
大興県
涿県
通県
覇県
武清県
平谷県
房山県
宝坻県
密雲県
良郷県

これらの県は、それぞれ独自の地理的特徴や歴史を持ち、京兆地方の行政運営において様々な役割を担っていました。それぞれの県の詳細な歴史や現状については、さらに詳細な調査が必要となります。

まとめ

京兆地方は、中華民国初期の北京周辺における特殊な行政区分でした。その設立と廃止は、当時の政治情勢や、首都近郊の統治方法を考える上で重要な事例と言えます。短い期間ではありましたが、北京の近郊地域に大きな影響を与えた行政区画であることは間違いありません。今後の研究によって、さらに詳細な歴史が明らかになることが期待されます。

もう一度検索