宛平県

宛平県（えんぺい-けん）は、かつて中華人民共和国の北京市南西部に存在した県です。その歴史は唐朝時代に遡り、幾度かの変遷を経て、現在の北京市の一部となっています。

歴史

宛平県の前身は、781年（唐朝の建中2年）に設置された幽都県（ゆうと-けん）です。当初、幽都県は薊県（けい-けん）と同城同治、つまり同じ城郭内に県治が置かれていました。その位置は現在の北京市大興区（だいこう-く）に相当します。1012年（遼朝の開泰元年）になると、幽都県は宛平県と改称されました。

その後、金朝時代には大興府（だいこう-ふ）、元朝時代には大都府（だいと-ふ）、明朝・清朝時代には順天府（じゅんてん-ふ）の府治が置かれるなど、北京の中心地域として発展しました。宛平県は、政治・経済・文化の中心地として重要な役割を果たしたのです。

1913年（民国2年）には、県治が盧溝橋（ろこうきょう）に移転しました。しかし、翌年には再び市内に戻され、1926年（民国15年）に再び盧溝橋に移転するという変遷を辿ります。この背景には、当時の政治情勢や都市計画などが影響していたと考えられます。

1952年、宛平県は廃止されました。その管轄区域は、豊台区（ほうたい-く）、海淀区（かいでん-く）、石景山区（せっけいざん-く）へと移管されています。これにより、宛平県という行政区分は消滅しましたが、その名は盧溝橋事件の舞台となった場所として、歴史に深く刻まれています。

宛平県は、その短い歴史の中で、中国の首都である北京の発展に大きく貢献しました。唐朝から清朝に至るまで、様々な王朝の統治下で、政治・経済・文化の中心地としての役割を果たし、現代の北京の礎を築いたと言えるでしょう。その歴史的な意義は、現代においても色褪せることはありません。

特に、盧溝橋事件の舞台となったことは、宛平県の歴史を語る上で欠かせない要素です。この事件をきっかけに日中戦争が勃発し、その後の中国の歴史に大きな影響を与えました。宛平県は、単なる行政区画ではなく、中国近代史における重要な場所として記憶されています。

現代の北京を訪れる際には、かつて宛平県が存在した場所に思いを馳せ、その歴史的な意義を感じてみてはいかがでしょうか。

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