京極派

京極派とは

京極派は、鎌倉時代中期から室町時代初期にかけて活躍した和歌の一つの流派です。藤原北家御子左流に属し、京極為教とその子為兼によって実質的に創始されました。為兼は、伏見院の歌道師範として迎えられ、持明院統（後の北朝）の宮廷で独自の歌壇を築き、斬新な歌風を流行させました。

京極派の特徴

京極派の歌は、従来の和歌の形式にとらわれず、実感を重視し、繊細な感覚的表現を特徴としています。その斬新な表現は、当時の歌壇に新鮮な刺激を与えましたが、同時に二条派からは奇抜で型破りだと批判されました。為兼の歌論書『為兼卿和歌抄』には、その歌風の理論的根拠が示されています。

京極派の構成

京極派は、大きく以下の3つの側面から構成されています。

1. 歌の家としての京極家: 京極為兼を祖とする歌道の家系。
2. 京極派の歌風を信奉する歌人たち: 為兼の歌風に共感し、独自の歌を詠んだ歌人たちの集団。
3. 伏見院宮廷における文学サロン: 伏見院を中心に、歌を通じて交流を深めた文化人たちの集まり。

これらの側面が互いに影響しあいながら、京極派という独特の文化圏を形成しました。

京極派の変遷

京極派は、鎌倉時代を前期、南北朝時代以降を後期と分けて捉えることができます。

前期京極派

前期では、京極為兼、伏見院、久明親王、永福門院、京極為子、冷泉為相、北畠親子らが活躍しました。この時期には、十三番目の勅撰和歌集である『玉葉和歌集』（伏見院下命、為兼撰）が編纂されました。

後期京極派

後期では、永福門院、花園院、光厳院らが活躍し、十七番目の勅撰和歌集である『風雅和歌集』（花園院下命、光厳院親撰）が編纂されました。しかし、観応の擾乱によって持明院統の要人が南朝側に監禁されたことで、持明院統宮廷は大きな打撃を受け、京極派は思わしい後継者を残せず衰退しました。

京極派の再評価

中世から近世にかけては、京極派はあまり評価されず、歴史の中に埋もれていました。しかし、近代に入ってから、折口信夫や土岐善麿といった研究者によってその歌風が再評価され、戦後には岩佐美代子らによって研究が進められ、その全貌が明らかになりつつあります。

関連文献

勅撰集: 『玉葉和歌集』、『風雅和歌集』
歌論書: 『為兼卿和歌抄』、『風雅和歌集序』
私家集: 『伏見院御集』、『光厳院御集』
歌合等:『永福門院御自歌合』
研究書: 『京極派和歌の研究』、『京極派歌人の研究』（いずれも岩佐美代子著）

関連項目

歌道

もう一度検索