岩佐美代子

岩佐美代子

岩佐美代子（いわさ みよこ、1926年3月1日 - 2020年1月17日）は、日本の国文学者。学位は文学博士（立教大学）。鶴見大学名誉教授。

生涯

1926年（大正15年）に生まれ、父は法学者の穂積重遠、兄は西洋史学者の穂積重行という学者の家系に育ちました。祖父は法学者の穂積陳重、母方の祖父は軍人・政治家の児玉源太郎、曾祖父は実業家の渋沢栄一という名家です。幼少期には昭和天皇の皇女である照宮成子内親王に「宮仕え」し、親しい学友として過ごしました。1945年（昭和20年）に女子学習院高等科を卒業後、厚生省勤務の医師である岩佐潔と結婚し、二児をもうけました。

1962年（昭和37年）に国文学研究を志し、1972年（昭和47年）に夫が亡くなった後、国立国会図書館非常勤職員、立教大学非常勤講師を経て、1982年（昭和57年）に鶴見大学助教授、1985年（昭和60年）に教授に就任しました。1993年（平成5年）から1995年（平成7年）には文学部長を務め、1997年（平成9年）に定年退職。2001年（平成13年）には『光厳院御集全釈』で読売文学賞を受賞しました。2020年（令和2年）1月17日、肺炎のため93歳で逝去。

人物・業績

岩佐美代子は、中世文学、特に和歌の研究に力を注ぎました。世間が南朝のロマンに傾倒する風潮に対し、北朝系の天皇を否定することにつながりかねないと危惧し、積極的に北朝の天皇や歌人たちを研究対象としました。その研究は、歴史的背景を踏まえ、客観的な視点から人物や作品を評価するものでした。

また、在野の学者であった高群逸枝の研究に高い評価を与え、埋もれていた才能の発掘にも貢献しました。清泉女子大学で起きたセクハラ二次被害事件では、支援者として被害者の救済に尽力しました。

著書

『京極派歌人の研究』（笠間書院 1974年）
『永福門院』（笠間書院 1976年）
『あめつちの心』（笠間書院 1979年）
『京極派和歌の研究』（笠間書院 1987年）
『木々の心花の心』（笠間書院 1994年）
『宮廷に生きる』（笠間書院・古典ライブラリー 1997年）
『宮廷の春秋』（岩波書店 1998年）
『宮廷女流文学読解考 中世編』（笠間書院 1999年）
『宮廷文学のひそかな楽しみ』（文春新書 2001年）
『源氏物語六講』（岩波書店 2002年）
『内親王ものがたり』（岩波書店 2003年）
『千年の名文すらすら源氏物語 学び直しの古典』（小学館 2005年）
『岩佐美代子の眼 古典はこんなにおもしろい』（笠間書院 2010年）
『讃岐典侍日記全注釈』（笠間書院 2012年）
『和泉式部日記注釈 三条西家本』（笠間書院 2013年）
『岩佐美代子セレクション 1　枕草子・源氏物語・日記研究』（笠間書院 2015年）
『岩佐美代子セレクション 2　和歌研究 附、雅楽小論』（笠間書院 2015年）
『為家千首全注釈』（笠間書院 2016年）
『京極派と女房』（笠間書院 2017年）

注釈

『風雅和歌集』（次田香澄と共編、三弥井書店 1974年）
『校注文机談』（笠間書院 1989年）
『玉葉和歌集全注釈』（笠間書院 1996年）
『光厳院御集全釈』（風間書房 2000年）
『風雅和歌集全注釈』上中下（笠間書院 2002 - 2004年）
『永福門院百番自歌合全釈』（風間書房 2003年）
『校訂中務内侍日記全注釈』（笠間書院 2006年）
『文机談全注釈』（笠間書院 2007年10月）
『秋思歌・秋夢集新注』（青簡舎（新注和歌文学叢書3） 2008年6月）
『藤原為家勅撰集詠 詠歌一躰新注』（青簡舎（新注和歌文学叢書5）2010年2月）
『京極派揺籃期和歌新注』（青簡舎（新注和歌文学叢書16） 2015年5月）

彼女の著作や研究は、日本の古典文学、特に宮廷文化や和歌の世界を深く理解するための貴重な資料となっています。

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