京王チキ2970形貨車

京王チキ2970形貨車は、1956年10月に2両が製造され、1986年3月まで京王帝都電鉄京王線で活躍したレール輸送用の長物車です。

概要

この貨車は、デハ2000形2001・2004の台枠と台車を再利用し、東横車輛工業によって製造されました。全長は13,910mm、荷重は12.5tで、車体中央には着脱式のクレーンが装備されていました。製造当初はチキ2970形2971・2972という番号でしたが、1957年4月にチキ270形271・272に改番されています。

1982年1月には、ブレーキ方式が自動ブレーキから[電磁直通ブレーキ]に改造され、運行の安全性が向上しました。しかし、荷役の効率の悪さと老朽化が進んだため、チキ290形に置き換えられる形で、1986年に廃車となりました。

特徴的なのは、この貨車が装備していた雨宮製H-1台車です。廃車後、この台車は若葉台工場に保存され、その歴史を今に伝えています。

詳細

京王チキ2970形貨車は、当時の鉄道輸送における効率化と安全性を追求した車両であり、その設計には様々な工夫が見られました。台枠と台車の再利用は、コスト削減と資源の有効活用に貢献しました。また、着脱式のクレーンは、レールなどの長尺物を効率的に積み降ろしすることを可能にし、輸送作業の迅速化に寄与しました。ブレーキ方式の電磁直通ブレーキへの改造は、列車の制動性能を向上させ、安全な運行を支えました。

しかし、時代の変化とともに、より効率的な輸送方法が求められるようになり、チキ290形のような新型車両が登場すると、チキ2970形は徐々にその役割を終えていきました。最終的には、老朽化も重なり、廃車という結末を迎えましたが、その一部は台車として保存され、鉄道史の一部として今も大切にされています。

参考文献
飯島巌、森本富夫、荒川好夫『復刻版 私鉄の車両17 京王電鉄』ネコ・パブリッシング、2002年（原著1986年）。ISBN 4873663008。
『鉄道ピクトリアル』通巻578号「特集 京王帝都電鉄」（1993年7月・電気車研究会）
出﨑 宏「私鉄車両めぐり 149 京王帝都電鉄」 pp. 223-242
「京王帝都電鉄 主要車歴表」 pp. 243-257
『鉄道ピクトリアル』通巻734号「特集 京王電鉄」（2003年7月・電気車研究会）
藤田 吾朗「京王の貨車のあゆみ」 pp. 187-194

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