京王デニ2900形電車

京王デニ2900形電車は、1953年（昭和28年）に1両のみ製造された、京王帝都電鉄（現：京王電鉄）の荷物電車です。製造当初はデニ2901という車両番号でしたが、後にデニ201に改番され、1986年（昭和61年）まで京王線で活躍しました。

車両概要

車体

車体長は16mで、両運転台構造を持ちます。特徴的なのは、両側の乗務員扉の隣に太い柱があり、その横に幅2,000mmの両開き扉が設けられている点です。扉と扉の間には4枚の窓が配置され、車体はマルーン色に塗装され、窓下には白い帯が巻かれていました。荷物電車としての用途と軽量化のため、内装は簡素化され、床は網目状の金属板が使用されていました。連結器は、廃車となった木造車デハ2000形（初代）から流用されています。

主要機器

主電動機

主電動機もデハ2000形（初代）からの流用で、イングリッシュ・エレクトリック (E.E.) 社が設計したDK-31を東洋電機製造がライセンス生産したTDK-31Nが、各台車に1基ずつ吊り掛け式で搭載されていました。歯数比は64:20=3.20です。

制御器

制御器も同様に、デハ2000形（初代）から流用されたウェスティングハウス・エレクトリック (WH) 社製のHL電空単位スイッチ式手動加速制御器が搭載されていました。制御段数は直列5段、並列4段で、弱め界磁制御は装備されていませんでした。

台車

台車は、デハ2111から流用された川崎車輛製のものが使用されました。

沿革

デニ2900形は、主に新聞輸送などの荷物電車として使用されました。就役直後の1955年（昭和30年）には、荷物電車として1往復、新聞輸送として1往復の運用についていました。

1957年（昭和32年）4月には、事業用車両の形式を旅客車と区別するため、デニ200形201に改番されました。

1964年（昭和39年）の京王線の1500V昇圧に際しては、それまで使用されていた600V専用の電装品を、井の頭線のデハ1560形、デハ1711、デハ1760形などの主電動機や、デハ1400形・デハ1700形の制御器を流用して、昇圧に対応する改造が行われました。この改造により、主電動機は東急デハ3450形と同系統の日立製作所HS-267D、主制御器は電動カム軸式間接自動加速（AL）式の日立製作所MMC-H-200Bに変更されました。台車も主電動機の関係からD-16Aに交換されています。

1969年（昭和44年）には、京王線でのATS運用開始に伴い、関連機器が搭載されました。

1972年（昭和47年）7月に小手荷物輸送が廃止された後は、桜上水工場の入換車や深夜のATS試験車、工事用臨時列車の牽引車として使用されるようになりました。

1982年（[昭和]]57年）1月には、デハ2711の改造車であるデワ221が投入された際、同車に合わせてブレーキ方式が自動ブレーキから[[電磁直通ブレーキ]に改造され、車体色もグレーに変更されました。

そして、1986年3月10日付で廃車となり、その生涯を終えました。

京王デニ2900形は、その短い生涯の中で、荷物輸送から事業用車両へと役割を変えながら、京王線の発展に貢献した車両と言えるでしょう。

もう一度検索