京義線・東海線鉄道および道路の連結事業

京義線・東海線 鉄道および道路連結事業：分断を乗り越える試みとその挫折

京義線・東海線鉄道および道路連結事業は、朝鮮半島の分断によって長らく途絶えていた鉄道と道路を再接続する計画です。この事業は、単なるインフラ整備にとどまらず、南北間の和解と協力の象徴としての意味合いも持っていました。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、多くの困難と挫折を経験しました。

構想の経緯

1972年の南北共同声明以降、南北間の対話が開始されました。その初期から、分断された鉄道と道路の再連結は重要な議題の一つでした。しかし、長年の対立と不信感から、事業はなかなか進展しませんでした。1980年代には、離散家族の相互訪問など、わずかながら交流の兆しが見えましたが、軍事境界線の壁は依然として厚く、鉄道と道路の再連結は、半ば夢物語と見られていました。

1998年、金大中大統領が「太陽政策」を掲げ、南北関係は新たな局面を迎えました。金剛山観光が開始され、南北間の人的交流が始まったものの、陸路での移動は実現しませんでした。鉄道と道路の連結が具体的に検討され始めたのは、物流ルートとしての利用が注目されたことがきっかけでした。また、金剛山観光や開城工業団地の運営においても、鉄道と道路の連結が強く望まれていました。2000年6月には、南北首脳会談で分断路線の再連結が合意されました。

構想の進展

首脳会談後、京義線と東海線が連結対象として選ばれました。京元線や金剛山電気鉄道も候補にはありましたが、物流面での利点や開城工業団地との関連性から、京義線と東海線が優先されました。2000年9月には、京義線の鉄道連結工事が開始されました。しかし、北朝鮮側の工事は遅れがちで、2001年には一時中断してしまいます。韓国側の粘り強い交渉の結果、2002年8月に連結工事の起工式が行われました。

工事の進行

2002年8月の南北閣僚級会談で、東海線道路の臨時道路を先行して開通させることが決定しました。2003年2月には、東海線臨時道路が開通しましたが、軍事境界線の通過方法を巡る意見の対立やアメリカ軍からのクレームにより、利用開始が遅れました。その後、北朝鮮側が一時利用を中断しましたが、2003年9月には本格的に利用が開始されました。京義線の臨時道路もすぐに完成し、開城工業団地の建設と運営に利用されるようになりました。鉄道工事は、韓国側が順調に進めたのに対し、北朝鮮側は遅れが目立ちました。そのため、韓国は資材や駅舎建設などを支援することになり、総額800億円以上の資金を投入することになりました。2003年6月には、京義線と東海線で同時に鉄道連結式が行われましたが、試運転は幾度となく延期されました。

鉄道試運転の具体化と挫折

2006年5月、京義線と東海線で試運転が計画されました。具体的な準備が進められていましたが、北朝鮮軍当局からの突然の中止通告により、試運転は実施されませんでした。試運転は翌2007年5月に実施されましたが、本格的な運行には至りませんでした。

貨物営業運転の開始

2007年10月には、開城工業団地の貨物輸送を目的とした定期貨物列車の運行が開始されました。これは、分断以来56年ぶりの南北間の定期列車運行でした。しかし、実際には貨物の輸送量が少なく、ほとんどが空車での運行でした。

運転の中止、再開、破壊

2008年11月、北朝鮮側が一方的に列車運行の中止を発表し、再び中断しました。その後、2018年には共同調査が実施され、式典参加者を乗せた特別列車が軍事境界線を越えて運行されましたが、その後の南北関係の悪化により、2024年1月には、北朝鮮側が京義線の北側区間を完全に断ち切ることを宣言しました。2024年10月には、京義線と東海線の北朝鮮側の道路の一部が爆破され、長年続いた再連結の試みは、事実上終焉を迎えました。

この事業は、南北関係の変動に大きく左右され、和解と協力を目指した試みが、政治的な理由により中断、破壊されるという、朝鮮半島の複雑な現実を象徴していると言えるでしょう。