金剛山電気鉄道

金剛山電気鉄道：朝鮮半島を貫いた幻の鉄路

金剛山電気鉄道は、日本統治時代の朝鮮半島で、金剛山への観光客輸送を目的として建設された電気鉄道です。総延長100キロメートルを超える長大な路線は、朝鮮半島の複雑な地形と、当時の最先端技術を駆使した壮大なプロジェクトでした。

構想から建設、そして開業まで

1918年、建築家・久米民之助が金剛山の開発に着手。朝鮮半島の地形に着目し、水力発電を用いた電気鉄道の建設を計画します。1919年には金剛山電気鉄道株式会社が設立され、1920年から水力発電所の建設、1921年から鉄道の建設が開始されました。当初は狭軌を予定していましたが、古川阪次郎の提言により標準軌に変更されています。

建設は困難を極めました。第一次世界大戦後の不況、資材の調達難、そして関東大震災による変電所設備の焼失など、幾多の困難を乗り越えて、1924年8月1日、鉄原～金化間が蒸気機関車による運行で開業。同年10月には電化が完了しました。

その後も路線延伸が進み、1931年7月1日、ついに鉄原～内金剛間の全線が開業。金剛山は一大観光地として発展し、金剛山電気鉄道も観光の活性化に大きく貢献しました。観光シーズンには朝鮮総督府[[鉄道]]からの直通夜行列車も運行され、活況を呈していました。

電力事業との兼営と終焉

金剛山電気鉄道は鉄道事業のほかに電力事業も展開しており、電力事業からの収益が鉄道事業を上回っていました。しかし、戦時体制の強化に伴い、1942年1月1日、京城電気に合併され、京城電気金剛山電鉄線となりました。太平洋戦争の影響もあり、1944年には一部区間が廃止。終戦後、朝鮮戦争によって設備が破壊され、軍事境界線によって路線が分断され、運行は停止しました。

現代に残る遺産

現在、廃線跡の大部分は、軍事境界線に隣接する非武装中立地帯（DMZ）や民間人出入統制区域となっており、立ち入りが制限されています。北朝鮮側の区間では、ダム建設によって路線の一部が水没しています。しかし、平壌の鉄道省革命事績館には、金剛山電気鉄道の電車が、金日成が乗車した車両として展示されています。また、横浜市の原鉄道模型博物館にも、金剛山電気鉄道の電車の模型が展示されています。

運行状況

金剛山電気鉄道は、観光シーズン（5月～10月）とオフシーズン（11月～4月）でダイヤが変更されました。観光シーズンには、鉄原～内金剛間の運行本数が増加し、二等車も連結されました。また、貨物輸送も重要な収入源であり、昌道鉱山からの硫化鉄鉱を輸送していました。

技術的側面

金剛山電気鉄道は、当時としては最先端技術を駆使した鉄道でした。水力発電による電力供給、標準軌の採用、そして長距離運転など、技術的な挑戦に満ちたプロジェクトでした。その技術的成果は、現代の鉄道技術の発展にも貢献しています。

まとめ

金剛山電気鉄道は、朝鮮半島の近代化、そして金剛山観光の発展に重要な役割を果たした鉄道でした。しかし、戦争と政治情勢の変化によって廃線となり、その歴史は現代においても大きな関心を集めています。その足跡は、朝鮮半島の歴史と技術発展の両面を象徴する存在として、これからも語り継がれていくでしょう。

沿革

1918年：久米民之助による金剛山周辺視察
1919年：金剛山電気鉄道株式会社設立
1920年：水力発電所工事開始
1921年：鉄道工事開始
1923年：関東大震災による被害、鉄原～金化間工事竣工
1924年：鉄原～金化間開業、電化
1931年：全線開業
1942年：京城電気に合併
1944年：一部区間廃止
以降：朝鮮戦争による廃線

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