京都大学吉田寮

京都大学吉田寮：現存する日本最古の学生寮

京都大学吉田寮は、京大吉田キャンパス吉田南構内にある日本最古の学生寄宿舎です。正式名称は「京都大学学生寄宿舎吉田寮」で、以前は「学生寄宿舎」「京大寄宿舎」「吉田近衛寮」などと呼ばれていました。

現存する建物は、築112年の現棟、築136年の食堂、築9年の西寮（新棟）の3つで構成されています。現棟は第三高等中学校・京都帝国大学の遺構であり、日本最古の現役学生寮です。食堂は第三高等中学校の遺構で、京大最古の大学建築物。いずれも吉田寮自治会によって運営される自治寮ですが、現棟と食堂は大学に明け渡し訴訟を起こされています。

歴史的建造物としての価値

吉田寮現棟は、明治・大正時代の歴史的建築資産として、建築の専門家から高く評価されています。引違いのガラス窓、軒天井やスティックワーク、内部縦板張りの腰壁や換気口を開いた棹縁天井、大空間を支えるトラス構造など、当時の木造洋風建築の技法が随所に見られます。

2009年には京都府教育庁指導部文化財保護課によって「京都府の近代和風建築」にリストアップされ、2015年には日本建築学会近畿支部と建築史学会から、その保存活用に関する要望書が提出されました。

老朽化と大学側の対応

築100年を超え、老朽化が著しい吉田寮現棟は、耐震性の問題から、京都大学によって明け渡し訴訟を起こされています。大学側は、大地震が発生した場合の倒壊や大破の恐れがあり、居住する学生の安全が確保できないことを理由としています。

2017年には「吉田寮生の安全確保のための基本方針」を策定し、全寮生に退寮を命令しましたが、吉田寮自治会は確約違反であるとして退寮に応じていません。現在も100人以上の寮生が居住を続けており、問題解決に向けた議論が続いています。

寮の構成

吉田寮は、主に現棟、食堂、西寮（新棟）の3つの建物から構成されています。

現棟：木造2階建ての3棟の寮舎（南寮・中寮・北寮）が並列し、平屋の管理棟（本館）につながる構造。収容定員は147名。居室は1人部屋または2人部屋です。1913年に京都帝国大学寄宿舎として建設され、旧・京都帝国大学寄宿舎の部材が転用されています。
食堂：木造平屋建ての構造。1889年に第三高等中学校寄宿舎の食堂として建設され、1913年に現在の場所に移築されました。1986年以来、営業を停止していますが、吉田寮自治会の寮生大会や、寮内外のサークルのライブや演劇の会場として利用されています。
西寮：木造3階建ての2棟と鉄筋コンクリート造3階建て（地下1階）1棟からなる混構造。収容定員は94名。2015年に建設されました。吉田寮自治会によれば、西寮は現棟の代替施設ではなく、旧吉田西寮の代替施設です。

自治寮としての運営

吉田寮は、1897年からあった京都帝国大学寄宿舎の運営方針を受け継ぎ、原則的に学生によって自治されています。寮生は厚生部、文化部、庶務部の3つの専門部に所属し、寮の運営に必要な業務を担当します。門限や消灯時刻などの明文化された生活規則は少なく、寮生活で問題が起きたときは当事者同士で対等に話し合い解決することが基本的な生活規則となっています。

学生運動との関わり

吉田寮は、戦前・戦後を通じて、学生運動の中心的な拠点としての役割を果たしてきました。京都学連事件や荒神橋事件など、数々の事件に関わり、学生自治の精神を体現してきました。

文化的な拠点としての役割

吉田寮食堂は、営業停止後も、寮内外のサークルのライブや演劇の会場として利用され、京大における文化的・芸術的活動の拠点となっています。食堂使用者会議・厨房使用者会議に参加し、誠実に話し合うことを条件に、誰でも利用できます。

現在の状況

吉田寮は、老朽化による存続問題に直面していますが、寮生たちは、その歴史的・文化的な価値を preserving しようと努めています。大学側との交渉や、地域住民との連携を通じて、吉田寮の未来を模索しています。

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