人の終期

人の終期とは

人の終期とは、法学および医学において、人間が死亡したとみなされる時点を指す概念です。この問題は、民法、刑法といった法分野ごとに議論が存在します。民法上では、人の死亡は権利能力の喪失を意味します。一方、刑法では、生きている者に対する罪（殺人罪や傷害罪など）と死体に対する罪（死体損壊罪など）の境界線として、人の終期（死亡）の確定が重要となります。

人の終期をめぐる学説

人の終期をめぐる学説は、法学と医学の両面から様々な議論がなされています。主な学説としては、以下のものがあります。

三徴候説（三兆候説）

三徴候説は、呼吸停止（呼吸の不可逆的停止）、心停止（心臓の不可逆的停止）、瞳孔散大という3つの兆候をもって人の死を判断する基準とするものです。この説は20世紀前半に広く普及しました。それ以前は、呼吸停止と心停止（心肺停止）のみが死の判断基準とされていました。瞳孔散大や対光反射の消失は、脳幹機能の消失と関連があります。

しかし、1960年代以降、人工呼吸器の発達により呼吸機能が機械によって維持されるようになり、三徴候説における呼吸停止の意義が薄れました。1970年代には脳死と呼ばれる状態も認識されるようになり、脳死を人の死に含めるかどうかが議論されるようになりました。脳死を人の死に含めない立場では、事実上、心停止のみが死の判断基準となります。

脳死説

脳死説は、脳死を人の死とみなす考え方です。1970年代以降、脳死という状態が認識されるにつれて、脳死を人の死と捉えるべきか、また脳死の定義をどのように定めるべきかが議論されるようになりました。

脳死の定義については、以下の3つの説があります。

脳幹死説

脳幹死説は、心臓活動、体温調節、呼吸などをつかさどる脳幹の不可逆的な停止をもって脳死とする説です。医学的な観点からは理論的な一貫性がありますが、大脳の機能が完全に停止しているかどうかは明確ではありません。

全脳死説

全脳死説は、脳幹と大脳を含む脳全体の不可逆的な停止をもって脳死とする説です。臓器移植を認めている多くの国で採用されています。

大脳死説

大脳死説は、意識機能を司る大脳皮質の不可逆的な停止をもって脳死とする説です。この説では、脳幹の機能が維持されたまま大脳のみが機能停止している状態での臓器移植などが可能になります。しかし、意識機能の消失のみを基準とすると、植物状態や無脳症児なども対象に含まれてしまい、一般的には受け入れられていません。

器質死説

器質死説は、脳の機能停止後、脳組織が溶解して器質死の状態になることをもって脳死とする説です。脳死の判定には、聴性脳幹反応テストや脳血流検査が必要であるとされています。

各国の法制度

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、1981年の大統領委員会で「死は単一の現象であるが、判定法には二通りある」という結論が出されました。この勧告に基づき制定された統一死亡判定法（UDDA）では、死の定義として「血液循環及び呼吸機能の不可逆的停止」または「脳幹を含む脳全体のすべての機能の不可逆的停止」が採用されています。

日本

日本では、臓器移植法が「脳死も死の一つとして認める」という立場を取っていますが、脳死を死とすることに同意しない者に対しては、その見解を強制しないことで、対立する考え方の調整を図っています。

出典

(参考文献や資料名はここに追記する)

関連項目

人の始期
認定死亡 - 失踪・行方不明によって死亡が確認できない場合の戸籍法上の制度
失踪宣告 - 失踪・行方不明によって死亡が確認できない場合の民法上の制度

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