人事を尽くして天命を待つ

人事を尽くして天命を待つ

「人事を尽くして天命を待つ」は、中国に由来することわざで、人がなしうる限りのことを行ったならば、その後の結果は天の意思に委ね、静かに受け入れるという意味を持ちます。この言葉は、人間の努力と、それを超えた運命の存在を示唆しています。

意味

ここで言う「人事」とは、人間が行うことができる全ての事柄、つまり努力や準備を指します。人としてなしうる限りのことを尽くすことで、後悔のないように、できることは全てやったという状態を目指します。そして「天命」とは、天から与えられた使命や運命を意味し、人間の力ではどうすることもできない、超越的な力の作用を指します。つまり、全力を尽くした後は、結果を天に委ね、冷静に受け入れる心構えが重要であると説いています。

この言葉を使うことで、自らが可能な限りの努力をしたということを相手に伝えることができます。また、結果がどうであれ、全力を尽くしたという事実は、自己肯定感につながり、その後の行動にも良い影響を与えるでしょう。

歴史

この言葉は、南宋時代の儒学者である胡寅の著書『読史管見』に登場します。4世紀の東晋王朝時代、将軍・謝安が異民族の大軍を破った戦いを描いた箇所で、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉が用いられました。謝安は、王朝の存亡がかかったこの戦いで、あらゆる戦略を駆使し、見事に勝利を収めました。胡寅は、謝安の戦いぶりを評して、人事を尽くしたことの重要性を説いたのです。

現代における解釈

このことわざは、現代においても様々な解釈がなされています。例えば、任天堂を築き上げた山内溥は、「どんなに人事を尽くしたつもりでも、人間は所詮は天命を待つ心境にはなれない。そういう意味でもわたしは、任天堂の名の由来のごとく、人事を尽くして天命を待つのではなく、単純に「運を天に任せる」という発想を積極的に取りたい」と述べ、このことわざを疑問視しました。これは、人間の努力だけではどうにもならないことがある、という現実を直視した上で、運の要素も積極的に受け入れるべきだという考え方を示唆しています。

まとめ

「人事を尽くして天命を待つ」は、人間の努力の限界と、運命の存在を認め、その上で最善を尽くすことの重要性を教えてくれることわざです。結果に一喜一憂するのではなく、全力を尽くした自分を信じ、冷静に結果を受け入れる姿勢を持つことの大切さを教えてくれます。

現代においては、努力だけでは報われないことも多々ありますが、それでもなお、目標に向かって全力を尽くすことは、自己成長につながり、未来を切り開く力となるでしょう。このことわざを胸に、日々の努力を重ね、その結果を謙虚に受け止めることが、より良い人生を送るためのヒントになるかもしれません。

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