人事委員会

人事委員会について

人事委員会は、都道府県や政令指定都市などの地方公共団体に設置される行政委員会です。その主な役割は、地方公務員の人事に関する事務を専門的かつ中立的な立場から処理することです。人事委員会は、合議制の組織であり、複数の委員によって構成され、公平な判断を担保する仕組みとなっています。

主な業務

人事委員会の業務は多岐にわたりますが、特に重要なものとして以下の点が挙げられます。

給与に関する報告・勧告: 地方公務員の労働基本権が制限されている代償措置として、民間企業の給与水準と比較した官民較差を調査し、職員の給与に関する報告や勧告を行います。これにより、公務員の給与が適正な水準に保たれるように努めています。
採用・昇任試験の実施: 地方公共団体の職員の採用や昇任に関する競争試験や選考を実施します。これにより、能力と適性に基づいた人材の登用を図っています。
不服申立ての審査: 職員が不利益処分を受けた場合、その不服申立てを審査します。これにより、職員の権利保護を徹底しています。
労働基準監督機関としての役割: 一般職の地方公務員に対する労働基準監督機関としての機能も担っており、職員の労働環境の適正化に努めています。

根拠法令と設置

人事委員会の設置は、地方自治法第202条の2第1項および地方公務員法第7条に規定されています。都道府県と政令指定都市には必ず設置することが義務付けられています。また、政令指定都市を除く人口15万人以上の市や特別区については、人事委員会または公平委員会のいずれかを設置することとされていますが、ほとんどの市では公平委員会が設置されています。

組織と委員

人事委員会は3人の委員で構成され、委員の任期は4年です。委員会の下には事務局が設けられ、実際の事務処理を行います。委員は、地方自治の理念を理解し、人事行政に関する知識や経験を有する者の中から、地方議会の同意を得て首長が任命します。委員は、常勤または非常勤であり、多くは非常勤です。地方公共団体の議会の議員や地方公務員との兼任は禁止されています。

委員の服務には、地方公務員法第36条に定める政治的行為の制限が準用されます。また、委員が以下に該当する場合は、欠格条項となります。

破産者で復権を得ていない者
禁錮以上の刑に処せられた者
地方公務員法違反により刑に処せられた者
懲戒免職処分を受け、2年を経過していない者
日本国憲法を暴力で破壊する団体を結成・加入した者
委員の2人が同一政党に属する場合

これらの規定は、委員の公正中立性を保ち、党派的な偏りを防ぐためのものです。

権限（業務）

地方公務員法第8条に基づき、人事委員会は以下のような権限を行使します。これらの権限は、行政権限、準立法的権限、準司法的権限の3つに分類されます。

行政権限

職員に関する条例の制定・改廃について議会に意見を申し出ること
人事行政の運営に関する任命権者への勧告
人事行政に関する調査・企画・立案
人事委員会の事務局長の任命
職員の競争試験・選考の実施
昇任試験の受験資格の指定
任用候補者名簿の作成
臨時的任用の承認
給料表に関する議会・長への報告・勧告
給与支払の監理
研修計画に関する任命権者への勧告
職員団体の登録
職員団体の登録効力の停止・取り消し
職員団体の解散届受理
登録職員団体の法人化に関する届出受理
労働基準監督機関としての職権行使
非登録職員団体への法人格付与の認証
職員の苦情処理

準立法的権限

法令・条例に基づく人事委員会規則の制定

準司法的権限

勤務条件に関する措置要求の審査
不利益処分に関する不服申立ての審理
職員団体の登録取消に関する口頭審理

過去に存在した人事委員会等

過去には、国会や内閣にも人事委員会が存在しました。国会では、1948年から1955年まで衆議院・参議院に常任委員会として人事委員会が設置されていました。また、内閣では、1947年から1948年まで臨時人事委員会が設置されていましたが、その後の人事院発足に伴い、国の行政組織としての「人事委員会」は実現しませんでした。

脚注

上記の情報は、地方自治法や地方公務員法などの関連法令に基づいています。

関連項目

公平委員会
人事院
人事院勧告
職階制
公務員試験
日本人事試験研究センター

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