人参座

江戸時代の薬用人参専売制度「人参座」

江戸時代、幕府は薬用人参の流通を管理し、専売制を敷くために「人参座」という組織を設けました。当時、日本国内で流通していた薬用人参には、主に「朝鮮人参」「唐人参」「和人参」の3種類があり、それぞれに専用の座が設けられ、厳格に管理されていました。

各人参座の詳細

朝鮮人参座

朝鮮人参は、その名の通り朝鮮半島から輸入された薬用人参です。輸入は対馬藩が独占的に行っており、対馬藩は江戸屋敷などでも販売を行っていました。延宝2年（1674年）には、幕府の許可を得て江戸に「朝鮮人参座」を設立。この座は大変な盛況で、徹夜で買い求める人々が列をなしたほどでした。しかし、宝永7年（1710年）に幕府から座での小売を禁止されることとなりました。

唐人参座

唐人参は、長崎を通じて輸入された薬用人参です。その出自は必ずしも中国産とは限らず、東南アジアなどで生産されたものも含まれていました。17世紀後半から輸入が開始され、享保20年（1735年）には、幕府は長崎屋源右衛門を江戸の「唐人参座」に指定しました。唐人参座は江戸だけでなく、京都や大坂にも設置され、広範囲で取引が行われました。

和人参を扱う座

和人参は、日本国内で栽培された薬用人参のことです。江戸時代初期には栃葉人参が自生していましたが、朝鮮種の人参が日本で栽培されるようになったのは、徳川吉宗の時代です。吉宗の命により、人参栽培の研究が進められ、享保14年（1729年）に日光での栽培に成功しました。日光で収穫された人参は「御種人参」と呼ばれ、各地で栽培するための種として用いられました。宝暦13年（1763年）には、江戸に「御種人参」を扱う座が設置されましたが、天明7年（1787年）には廃止されています。

人参座の歴史的意義

人参座は、薬用人参の流通を独占的に管理することで、幕府の財政を支える重要な役割を果たしました。特に、朝鮮人参や唐人参は貴重な輸入品であり、その取引は大きな利益をもたらしました。和人参の栽培成功は、国内での薬用人参自給自足への道を開き、幕府の薬物政策に大きな影響を与えました。

人参座の設置と運営は、当時の経済や流通システム、さらには幕府の政策を理解する上で、非常に重要な要素であると言えるでしょう。

これらの情報は、以下の資料に基づいています。

岩下哲典『権力者と江戸のくすり』北樹出版、1998年、ISBN 4893846507
坂内誠一『江戸のオランダ人定宿 長崎屋物語』流通経済大学出版会、1998年、ISBN 4947553065

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