座

座（ざ） - 中世日本の同業者組合

平安時代から戦国時代にかけて、日本の商工業や芸能の世界において重要な役割を果たした「座（ざ）」は、同業者たちが結成した組合です。貴族や寺社に金銭を納める代わりに、特定の商品の販売や営業における独占権などの特権を認められていました。

座の起源と定義

「座」の語源については諸説ありますが、有力な説として「公的な場所や市場における特定の座席」を意味する説と「同業者による集会の場」を意味する説の2つがあります。近年では、これらの意味合いを両方併せ持つものとして理解されています。

座は、必ずしも地縁的なつながりを必要とせず、特定の資格を持つ者たちが集まって結成されることもありました。一方で、里単位や町単位で結成された「里座」「町座」といった形態も存在しました。

座は、公家や寺社を「本所」として、一定の役務や貢納を行い、その見返りとして、本所から座の構成員である「座衆」に供御人や寄人、神人などの身分が与えられ、保護されていました。記録に残る最古の座は、青蓮院を本所とする八瀬里座で、杣伐夫や駕輿丁によって構成され、延暦寺や朝廷に奉仕していました。これは後の「八瀬童子」の源流となったと言われています。

座の活動と特権

鎌倉時代に入ると、大都市や商工業都市を中心に座の数が増加しました。京都では、西陣織の源流となった大舎人の織手座、祇園社の綿座・錦座、北野社の麹座などが有名です。その他、山城大山崎の油座、摂津今宮の魚座、鎌倉の材木座、博多の油座なども知られています。大和の興福寺や近江の日吉大社なども多くの座を支配下に置いていました。

座は、商品の仕入れを独占し、必要に応じて運搬路や運送手段までも独占しました。本所の政治力を背景に、関所での通行税や市場での営業税の免除といった特権を得ていました。一方で、座外の商人や職人の営業を禁止し、座衆による独占を維持することに努めました。生産地の座と消費地の座が連携したり、大都市の座が地方の座を支配したりするなど、座同士の連携も盛んに行われました。

室町時代以降の変容と解体

室町時代に入ると、座を取り巻く環境は変化しました。京都における官衙などの領主権力が強化され、座の権威を無視して営業税が課せられるようになりました。地方の商工業者は地元の領主と結びつき、座の権威に挑戦する動きも活発化しました。

こうした状況の中で、座も変質していきました。本所から自立した営業集団に転化したり、官衙や領主と結びつきを強め、新たな本所とする座も現れました。座衆の数を制限して世襲化を図ろうとする動きもありました。一方、新興商人は「新座」と呼ばれる新たな座を結成し、既成の座と同様の特権を求め、「孫座」と呼ばれる第三の座が出現する例もありました。

織田信長の楽市楽座政策、そして豊臣秀吉による政策によって、中世の座は解体されました。これにより、座による特権的な支配は否定されましたが、逆に、領主と結びついた特定の御用商人による支配が確立されるきっかけとなりました。しかし、全ての座が解体されたわけではなく、座役を伴わない商業共同体として残存したものもありました。芸能の世界では、主要な大夫を家元とする芸能集団としての座が形成され、江戸時代以降「○○座」という呼称で呼ばれるようになり、劇場や映画館の名称としても用いられるようになりました。江戸時代には、幕府の管理下に金座や銀座などが作られました。

まとめ

「座」は、中世日本の経済と社会構造を理解する上で欠かせない存在でした。その成立、発展、そして解体までの過程は、時代の変遷と社会構造の変化を反映しています。座の遺した歴史的遺産は、現代社会においても様々な形で影響を与え続けていると言えるでしょう。

もう一度検索