人権擁護委員

人権擁護委員の概要と役割

人権擁護委員（じんけんようごいいん）は、日本において市町村ごとに任命される非常勤のボランティア職であり、主に国民の基本的人権を守るための活動を行います。この制度は、人権擁護委員法（昭和24年法律第139号）に基づいており、法務大臣により委嘱されます。委員の使命は、国民の権利が侵害されることを防ぎ、万が一侵害があった際には適切な救済措置を講じることにあります。

任命と任期

人権擁護委員は各市町村長から推薦された候補者の中から、都道府県の弁護士会と人権擁護委員連合会の意見をもとに法務大臣が委嘱します。任期は3年ですが、後任者が決まるまで職務を継続することが求められます。基本的にはボランティアであるため、給与は支給されませんが、必要な経費は弁償されます。

職務内容

委員は主に以下の任務を担っています：
1. 自由人権思想の普及・啓発。
2. 民間での人権擁護運動の助成。
3. 人権侵犯事件の調査や情報収集、法務大臣への報告。
4. 貧困者への訴訟援助やその他の救済措置の提供。

これらの職務を遂行する際、委員は対象者のプライバシーを尊重し、差別や優遇を行わず、公正に職務を行うことが求められます。また、政治的な目的でその地位を利用することも禁じられています。

委員の選任基準

人権擁護委員になるためには、日本国籍を持ち、成年になっていることが必要です。人権擁護の理念を理解し、社会問題に通じた人格識見のある市民が求められます。過去に禁錮以上の刑に処せられたり、人権侵害に関与した者は委員に就任できず、またそのような理由で失職することもあります。

組織体制と活動実績

人権擁護委員は、日本全国に約1万3,689名が活動しており、その中には様々な職業の人々が含まれています。特に60歳以上の高齢者が多く、無職の割合も高いことが特徴です。委員は人権の啓発作業や相談業務に率先して取り組んでおり、2011年の活動実績では227,683回の人権啓発活動、159,157件の相談件数を記録しました。

制度の歴史と改革

人権擁護委員制度は1948年に始まり、長い歴史を持ちます。当初は法務庁によって管理されていましたが、制度の拡充とともに各法務局の人権擁護部門も設置され、活動の幅が広がりました。しかし、時が経つにつれて、実効性の乏しい委員や経験不足が指摘される場面もあり、改善が求められました。

1997年には人権擁護推進審議会が設置され、人権保護のための新たな施策が検討され、様々な改革案が提案されました。その後も人権擁護委員制度の見直しは続き、制度の実効性向上に向けた努力が行われています。

まとめ

人権擁護委員は、国民の基本的人権を守る重要な役割を果たしています。ボランティアとして活動する中で、社会問題に貢献することで、より良い社会を実現するために尽力しています。今後の制度改革や活動強化は、彼らの重要な使命を一層充実させることに寄与するでしょう。

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