人民警察機動隊

人民警察機動隊（Volkspolizei-Bereitschaften ,VPB）

人民警察機動隊（ドイツ語: Volkspolizei-Bereitschaften ,VPB）は、ドイツ人民警察の即応部隊であり、ドイツ民主共和国（東ドイツ）における内務省兵舎部隊(内務省軍)の主力を占めました。

概要

1955年、東ドイツ内務大臣の指揮下、労働者の武力として人民警察機動隊(VP-Bereitschaften)が編成されました。これは、兵営人民警察の前身である機動警察（Bereitschaftspolizei）と並行するものでした。VPBは、人民警察や兵営人民警察とは異なる命令系統を持つ独立した戦力であり、ソ連をはじめとする東側諸国の内務省軍と同等の位置づけでした。

1962年、VPBにも兵役法に基づく徴兵制が導入され、国家人民軍、国境警備隊、国家保安省の部隊、民兵組織などと同様の扱いを受けました。ただし、機動隊および鉄道警察戦闘部隊の兵役期間は、国家人民軍などよりも長い18ヶ月でした。徴兵は国家人民軍の各軍管区が一括して行い、給与も国家人民軍から支給されました。1962年から1982年まで、機動隊への志願は、軍の兵役を代替する手段の一つとされていました。

VPBは、一般警察中央部隊(Zentrale Kräfte Schutzpolizei, ZKS)と並列して各地の人民警察地区支部に設置され、機関銃や各種小火器を備え、軍に倣った部隊編成が行われました。一般警察の警察官で構成されていた即応コマンド(Schnellkommandos)は1967年に解体されましたが、一部は機動隊に残留しました。

1988年12月21日、国防評議会議長エーリッヒ・ホーネッカーの元に発効された12/88号指令により、VPBは警察力の強化に重点を置くことになり、将校、下士官、徴収兵のすべてが警察法の講義を受けた後、軍事訓練に参加しました。ドイツ民主共和国が崩壊する直前まで、人民警察地方支部の各管区では入隊志願者が募集数を上回っていました。

歴史

1948年9月22日: ドイツ内務管理局(Deutsche Verwaltung des Innern, DVdI)に国境警察及び機動隊部(Hauptabteilung Grenzpolizei und Bereitschaften, HA GP/B)が設置。
1949年: 各地の警務大隊(Wachbataillon)と機動隊が統合。
1952年: 警護大隊が人民警察地方支部と地区駐屯地への駐屯を開始。
1952年7月1日: 機動隊を含む戦力が警務隊(Wacheinheiten)として統合され、指揮権が兵営人民警察に移管。
1953年6月16日: 東ベルリン暴動が発生。鎮圧後、防衛隊及び国境警察機動隊司令部が人民警察機動隊として再編成。
1955年: 後方部隊と機械化部隊が新たに設置され、内務省の指揮下に置かれる。
1956年11月1日: 人民警察機動隊が国家保安省の指揮下に移る。
1957年2月1日: ドイツ機動隊司令部の指揮権が内務省へ返還され、機動隊は10の部隊に再編成。
1961年8月13日: 人民警察機動隊および内務省第1旅団がベルリンの壁建設のために労働者階級戦闘団(Kampfgruppen der Arbeiterklasse)の召集を支援。
1961年8月15日: 壁の建築現場を警備していた機動隊員コンラート・シューマンが西ドイツへ脱出。
1962年1月24日: 新たな兵役法が制定され、人民警察機動隊は21の部隊に拡張して再編成。
1985年11月1日: 内務省にて兵舎部隊が再編成され、人民警察機動隊の規模が縮小。
1990年10月3日: 東西ドイツの統一。人民警察機動隊を含む内務省兵舎部隊は解散し、少数の将校と下士官のみが新生ドイツ警察に残留。

職務

人民警察機動隊の職務は、1968年6月11日に発効された警察法に基づいていました。主な任務は以下の通りです。

治安活動
防衛任務
「公秩序と安寧に対する脅威の除去」

VPBは、一般警察中央部隊が必要とする場合、検察権限を有していました。各中隊及び小隊の指揮官は人民警察地方支部に所属する人民警察将校によって指揮され、法の遵守を厳命されていました。

編成と展開

21個以上の人民警察機動隊が編成されていましたが、その内6つは内務省直轄部隊としてベルリン付近に配置されました。その他、ポツダム人民警察地方支部の指揮下にある部隊や、内務省第一次長指揮下の部隊などが存在しました。機動隊は主に大都市圏に駐屯していました。

構造

人民警察機動隊の構造は以下の通りです。

司令部要員
政治局員
参謀
後方支援班
活動部隊

参謀部の構造は国家人民軍に倣ったものであり、政治局はプロパガンダや政治教化を担当しました。

警察活動

警察活動は次のように分類されていました。

通常の個別警察活動
指令に基づく秩序警察出動
警察戦闘出動
民間防衛の編制と実働部隊を支援する活動

戦闘任務

戦闘任務については、特に以下の点が定められていました。

ドイツ民主共和国において財産の保護、法秩序の回復、保安が必要とされる場合、ドイツ人民警察は武装勢力及びその他犯罪全てに対処しなければならない。

人民警察機動隊は、一般の警察と異なる特殊な戦術、部隊、装備等を利用して任務を遂行しました。

訓練

人民警察機動隊における訓練は、人民警察法に基づいて内務大臣によって管轄されました。訓練内容は、政治的教育、戦術行動、守備任務、戦闘任務など多岐にわたりました。また、訓練の一環として様々な国策事業に労働力を提供することもありました。

下士官教育はクルト・シュロッサー下士官学校で行われ、歩兵班長、装甲車班長・指揮官、工兵班長などの育成が行われました。士官教育はアルトゥール・ベッカー内務省高級士官学校で行われました。

海外派遣

人民警察機動隊の将校団は、軍事顧問として海外に派遣されることもありました。南イエメン、ニカラグア、モザンビーク、イラクなどに派遣され、対反乱作戦の指導や秘密警察編成の支援などを行いました。

参考文献

Jörn Steike: Die Bereitschaftspolizei der DDR 1950–1990. Geschichte – Struktur – Aufgaben – Rechtliche Ausgestaltung. tuduv Verlag, München 1992.
Jörn Steike: Von den „Inneren Truppen“ zur Bereitschaftspolizei (1953–1990). In: Torsten Diedrich, Hans Ehlert, Rüdiger Wenzke: Handbuch der bewaffneten Organe der DDR. Christoph Links Verlag – LinksDruck GmbH, Berlin 1998
Autorenkollektiv: Historischer Abriß zum Aufbau und zur Entwicklung der Volkspolizei-Bereitschaften 1945–1985. Vorabdruck des MdI, Berlin(O) 1988
Thomas Fischer: Polizeisoldaten / Kasernendienst – Straßenkämpfe – Atombunker. Helios-Verlag, Aachen 2006, ISBN 3-938208-39-2.

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