人生は二度とない

『人生は二度とない』（Zindagi Na Milegi Dobara）は、2011年に公開されたインドのヒンディー語ロードコメディドラマ映画です。監督はゾーヤー・アクタルが務め、リテイック・ローシャン、アバイ・デーオール、ファルハーン・アクタル、カトリーナ・カイフ、カルキ・ケクランといった実力派俳優が出演しています。結婚を控えた男性と彼の幼馴染である2人の友人たちが、スペインを巡る旅を通して人生における大切なものを見つけ出していく物語が描かれており、スペインを中心にインド、エジプト、イギリスなど、様々な場所で撮影が行われました。

当初は2011年5月27日の公開が予定されていましたが、編集作業の遅れから同年7月15日に封切られました。公開後、インド国内の主要な映画賞で数多くの部門にノミネートされ、第57回フィルムフェア賞では13部門ノミネート中7部門、第59回国家映画賞では2部門を受賞するなど、高い評価を獲得しました。日本でも、2011年の第8回ラテンビート映画祭で『人生は一度だけ』のタイトルで上映された後、2022年に改めて『人生は二度とない』として劇場公開され、好評を博しました。

ストーリー

物語は、結婚間近のカビールが学生時代からの親友であるイムラーンとアルジュンを誘い、3週間にわたるスペインでのバチェラー・パーティーを計画するところから始まります。3人は、お互いに内緒でスリル満点のサプライズアクティビティを予約し、全員で挑戦するという特別な約束を交わしていました。しかし、仕事に没頭する金融ブローカーのアルジュンは旅行に乗り気ではなく、コピーライターのイムラーンは養父の手紙から実父がスペインに住んでいることを知り、母親の反対を押し切って旅の途中で捜すことを決意します。彼らはバルセロナで合流し、旅をスタートさせますが、早くもアルジュンの仕事への執着にイムラーンとカビールは呆れ、イムラーンがアルジュンの携帯電話を投げ捨てるという騒動が勃発。これがきっかけで、アルジュンは4年前のイムラーンの行動に対する怒りをぶつけますが、カビールの仲介によりその場は収まります。

最初の目的地コスタ・ブラバでは、カビールが予約したスキューバダイビングに挑みます。インストラクターとして現れたのは、アルジュンが一目惚れしたレイラでした。泳げないアルジュンは尻込みしますが、レイラのサポートを得て恐怖心を克服し、海中の世界を通じて新たな視点を得ます。スキューバダイビングを終えた後、本来はアルジュン企画のアクティビティに向かう予定でしたが、レイラの提案で急遽ブニョールのトマト祭りへ向かうことになります。一方、カビールは婚約者のナターシャとビデオ通話中にレイラが映り込んだことで疑念を持たれ、ナターシャがスペインに駆けつけてきます。予期せぬ来訪にカビールは不快感を覚えますが、その夜は3人とナターシャがそれぞれ一夜を共にします。

翌日、ナターシャを交えた4人は次の目的地セビリアへ出発しますが、レイラはアルジュンへの恋心を自覚し、友人の助言を受けて彼らを追いかけ、アルジュンと情熱的なキスを交わします。このキスにより、アルジュンもまたレイラへの気持ちに気づき、カビールとナターシャの間の疑念も晴れます。

ナターシャを空港へ見送った後、セビリアに到着した3人は、アルジュン企画のスカイダイビングに挑戦します。高所恐怖症のイムラーンはためらいますが、友人たちに促され、見事に大空への飛躍を成功させます。その夜、バーで泥酔した彼らは騒ぎを起こして警察に逮捕されてしまいます。留置所の中で、イムラーンは実父サルマンが近くに住んでいることを打ち明け、彼に連絡を取ると、サルマンは3人を釈放させ、自宅に招きます。イムラーンはサルマンと初めて向き合い、彼が結婚や子を持つことに消極的だった理由を聞かされます。父との対話を終えたイムラーンは、アルジュンに4年前の出来事について謝罪し、2人の間のわだかまりが解消されます。

旅の最後のアクティビティは、イムラーンがレイラを伴って向かうパンプローナでの牛追い祭りです。祭りの直前、カビールはイムラーンとアルジュンに、ナターシャとの結婚の真実を明かします。それは、母親へのプレゼントだった指輪をナターシャが婚約指輪と勘違いし、親族にプロポーズされたと話してしまったために、訂正できなくなったというものでした。牛追い祭りの当日、イムラーンは祭りを無事乗り越えたら各自の目標を宣言しようと提案します。イムラーンは詩集を出版すること、アルジュンはレイラとモロッコへ旅すること、カビールはナターシャに結婚しないことを告げることを誓います。3人は牛追い祭りを完遂し、それぞれの誓いを実行に移していきます。

物語の終盤では、イムラーン、カビール、ヌリア、そしてナターシャがアルジュンとレイラの結婚式に招かれます。カビールとナターシャは友人として良好な関係を続けており、ナターシャは新しい恋人をカビールに紹介します。イムラーンの詩集も無事に出版されたことが明かされ、それぞれの新しい人生が始まったことを示唆して物語は幕を閉じます。

製作背景

脚本は監督のゾーヤー・アクタルとリーマー・カーグティーが3ヶ月をかけて完成させました。当初の仮タイトルは「Running with the Bulls」でしたが、最終的に『Rock On!!』（2008年）の楽曲歌詞から引用した「Zindagi Na Milegi Dobara」に決定しました。脚本には実体験も反映されており、イムラーン役はゾーヤーの弟であるファルハーン・アクタルをイメージして書かれたと言われています。ファルハーンは本作のプロデューサーも兼任しており、映画のテーマを「人生へのコミットメントを前にした3人の男」と語っています。ナレーションにはファルハーンの父、ジャーヴェード・アクタルの詩が用いられ、登場人物の感情や内面を表現する効果を生んでいます。撮影地は当初メキシコの予定でしたが、牛追い祭りをクライマックスにしたいというゾーヤーの希望と、歴史、文化、スポーツが融合した国という条件からスペインに変更されました。編集技師の病気による再編集のため、公開日は二度延期されました。

キャスティングでは、主人公3人のうち2人には当初イムラーン・カーンとランビール・カプールが検討されていましたが、出演が叶わず、ゾーヤーが信頼を寄せる弟のファルハーンが最初にイムラーン役に決定しました。アルジュン役には、ゾーヤーのお気に入り俳優であるリテイック・ローシャンが起用され、最後の1人であるカビール役には、ヴィジュアルだけでなく何か新しいものを見せてくれる俳優として、アバイ・デーオールが選ばれました。

ヒロインのレイラ役には、インド人と白人の混血でスペイン語の訛りがあり、スキューバダイビングができる女優が求められました。多くのオーディションが行われた結果、ゾーヤーがパーティーで知り合ったカトリーナ・カイフに白羽の矢が立ちました。ナターシャ役のカルキ・ケクランは、ゾーヤーが以前から一緒に仕事をしたいと考えていた女優であり、彼女のコメディセンスが役柄に合致すると判断されました。

主要撮影は2010年6月からイギリス、エジプト、インド（ムンバイ）、スペイン（バルセロナ、パンプローナ、ブニョール、アンダルシア）で行われました。撮影監督は前作に引き続きカルロス・カタランが担当し、リアリティを追求するため登場人物の顔を日焼けしたように見せる演出を取り入れました。印象的な「Ik Junoon」の撮影では、ブニョールのトマト祭りを再現するために、ポルトガルから16トンのトマトが空輸されました。また、「セニョリータ」の撮影では現地の住民や市長も参加し、スペインの雰囲気を演出しました。

音楽はシャンカル＝イフサーン＝ロイが作曲、ジャーヴェード・アクタルが作詞を手掛けています。「セニョリータ」ではスペインのフラメンコ歌手マリア・デル・マル・フェルナンデスが参加しており、主要キャストの一部もボーカルを務めています。

公開と評価

本作は2011年7月15日に約1800スクリーンで公開され、好調なスタートを切りました。公開初週は『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』に次ぐ興行成績を記録し、特に都市部のシネマコンプレックスでは高い稼働率を維持しました。最終的な全世界累計興行収入は15億3000万ルピーに達し、当時のヒンディー語映画として歴代9位となる大ヒットを記録しました。海外市場でも高い評価と興行収入を獲得し、2011年に海外で最も成功したインド映画の一つとなりました。

批評家からも概ね肯定的な評価を受けました。演出、脚本、音楽、映像美、そしてキャスト陣の演技が特に高く評価され、「美しい脚本によるカタルシスの旅」「ヒンディー語映画におけるゲームチェンジャー」といった賛辞が寄せられました。旅の途中で行われるスキューバダイビング、スカイダイビング、牛追い祭りといったアドベンチャー・スポーツが、登場人物たちの内面の変化や成長のシンボルとして効果的に機能している点が指摘されました。

一方で、上映時間の長さについて一部批判的な意見もありましたが、全体としては観客にポジティブなメッセージと感動を与える作品として広く受け入れられました。

公開後、クライマックスの牛追い祭りの描写に対して動物愛護団体PETAが抗議を行うといった騒動も発生しましたが、製作側は動物を傷つけていないことを証明する書類を提出し、スペイン文化の紹介を意図したものであると反論しました。

ソフト化や配信も行われ、DVD、Blu-rayが発売されたほか、NetflixやAmazon Prime Videoなどの配信サービスでも視聴が可能となりました。

続編について

本作の成功後、続編の可能性について何度か言及されていますが、監督のゾーヤー・アクタルやプロデューサーのファルハーン・アクタルは、現時点では具体的な続編製作の計画はないと述べています。しかし、ファンからの続編を望む声は多く、将来的な可能性については含みを持たせています。

『人生は二度とない』は、友情、恋愛、家族、そして自己発見といった普遍的なテーマを、美しいスペインの風景とユーモア、そして感動的なストーリーで描き出し、多くの観客に支持された傑作として、インド映画史に名を刻んでいます。

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