人相学

『人相学』または『観相学』は、アリストテレスの名を冠する自然学の短編著作であり、『小品集』を構成する9編の一つです。しかし、アリストテレス自身の作品ではなく、ペリパトス派（逍遙学派）の後輩たちによって書かれたと考えられています。

構成

全6章で構成されています。

第1章：人相学研究の目的、気質と身体の関係、霊魂の身体への影響、身体と霊魂の相関関係、研究方法、研究上の誤りについて論じます。
第2章：人相学の定義、人相学研究の根拠となる皮膚の色、毛髪、声、勇敢さ、臆病さなどの特徴について解説します。
第3章：勇敢、臆病、気立ての良さ、鈍感さ、厚かましさ、謹直さ、快活さ、無気力さ、淫蕩さ、執拗さ、激情さ、温和さ、皮肉っぽさ、卑屈さ、憐れみ深さ、健啖さ、好色さ、眠たげさ、記憶明晰さなど、様々な性格の特徴について記述します。
第4章：霊魂と身体は共感的で相互依存的であるという、研究の目的と方法を再論します。
第5章：勇敢さ、臆病さ、正義、不正義といった特徴を、動物の類型に基づいて選択します。雄と雌の比較、ライオン、豹などが例として挙げられます。
第6章：動物の身体各部から人間の特徴を推論する方法について述べます。

内容詳細

『人相学』は、外見から内面を読み解こうとする試みであり、古代ギリシアにおける自然哲学の一端を示すものです。身体的な特徴と性格との関連性を探求し、観察と推論に基づいて人間の本質を理解しようとしています。現代の心理学や行動学とは異なるアプローチですが、人間理解への興味深い視点を提供しています。

この著作は、単なる容姿判断の指南書ではなく、当時の人々がどのように人間を観察し、分類し、理解しようとしていたのかを知るための貴重な資料です。外見だけでなく、声や振る舞いなど、様々な要素を総合的に考慮して性格を判断しようとする姿勢は、現代の人間関係においても参考になる点があるかもしれません。

日本語訳

『アリストテレス全集10』 岩波書店、1969年
『新版 アリストテレス全集12 小論考集』岩波書店、2015年

関連項目

* 小品集 (アリストテレス)

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