人間は何を食べてきたか

ドキュメンタリー番組『人間は何を食べてきたか』：食の歴史と文化への深遠な探求

『人間は何を食べてきたか』は、1985年から1994年にかけてNHKで放送された、日本のドキュメンタリー番組です。教育テレビスペシャル、NHK特集、そしてNHKスペシャル枠で放送され、人々の食生活の歴史と文化を深く掘り下げた内容で知られています。

この番組は、世界各地の様々な食べ物の起源に焦点を当て、食を通して生まれた文化や社会構造を多角的に考察しています。単に食べ物を紹介するだけでなく、その背景にある歴史、人々の生活、そして食文化の変遷を丁寧に描き出すことで、視聴者に食のあり方について改めて考えさせる機会を提供しました。

番組の構成と内容

番組は複数のシリーズで構成されており、それぞれ異なるテーマで食文化を探求しています。

第1シリーズ「～食と文明の世界像～」は、肉、パン、乳製品、ジャガイモ、米といった主要な食料に着目。これらの食材がどのように人類の歴史と文化を形作ってきたかを、世界各地の取材を通して明らかにしています。1984年末には『食のルーツ・5万キロの旅』として衛星放送で先行放送され、その後、教育テレビで再放送されました。

第2シリーズ「～アジア・豊かなる食の世界～」では、アジアを舞台に、麺、カレー、タロイモ・ヤムイモ、茶、醤油といった、アジア独特の食文化を深く探求。アジア各国の豊かな食文化とその歴史的背景を浮き彫りにしています。

第3シリーズ「海と川の狩人たち」は、海と川を主な生業とする人々の食生活に焦点を当てています。インドネシア、アフリカ、南太平洋、カナダといった地域の人々の暮らしと、彼らが自然から得る食料との関わりを丁寧に描いています。放送回は「海編」と「川編」に分かれて放送されました。

第4シリーズは、副題のない独立した番組として放送されました。モチ米、スイカ、トウモロコシ、雑穀といった、様々な穀物を取り上げ、それらが人々の生活と文化に及ぼしてきた影響を考察しています。

制作陣とナレーション

番組の音楽は、シリーズごとに異なる作曲家が担当。高島明彦氏（第1シリーズ）、S.E.N.S.（第2シリーズ）、渡辺俊幸氏（第4シリーズ）といった、日本の音楽界を代表する作曲家たちが、番組の世界観を彩る音楽を制作しました。ナレーションもシリーズごとに異なり、佐野浅夫氏、生方惠一氏、樫山文枝氏、寺田農氏といったベテラン俳優が担当しています。

ソフト化と再放送

番組はVHS、DVDとしてソフト化されており、特にDVD-BOXにはスタジオジブリの高畑勲監督と宮崎駿監督による座談会が収録されていることで知られています。近年では、4K高解像度でマスターが修復され、NHK BS4KとNHK BSプレミアムで順次再放送されています。

備考

番組では、歴史的な事実に基づいて食文化を解説していますが、視聴覚効果を高めるために、映像に加工が施されている部分もあります。例えば、動物の解体シーンなど、視聴者に不快感を与える可能性のある場面は配慮して編集されています。

『人間は何を食べてきたか』は、単なる料理番組ではなく、人類の歴史と文化を食という視点から見つめ直す、貴重なドキュメンタリー番組です。その緻密な取材と深い考察は、現在でも多くの視聴者から高く評価されています。4Kレストア版の再放送により、新たな世代にもこの番組の魅力が伝えられることが期待されています。

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