人類資金

『人類資金』は、福井晴敏による小説であり、それを原作とした日[[本映画]]です。この作品は、第二次世界大戦後の混乱期に隠されたとされる巨額の秘密資金「M資金」を巡る陰謀と、それに関わる人々の戦いを描いています。

作品概要

小説版は2013年7月から講談社文庫より刊行され、全7巻で完結しました。映画版は同年10月に公開され、小説と映画で同一のプロットを基に、それぞれ独立したストーリーが展開されました。

この企画は、2005年に映画『亡国のイージス』でタッグを組んだ福井晴敏と阪本順治が、阪本監督が長年温めていた「M資金」をテーマに再び協力することで始まりました。福井自身も過去にM資金を題材にした習作を書いていたことから、この提案に共鳴し、小説と映画の連動企画として制作が進められました。

通常、原作付きの映画では、映画製作前に原作小説が完成していることが多いですが、本作では福井が映画製作に深く関わった後、小説に着手したため、小説の刊行が映画と並行して進められるという異例の形となりました。

作品の特徴

福井作品の多くは、作品間の世界観が共通していることが特徴です。本作も、2011年に出版された『震災後』の続編という位置づけではありますが、各作品の物語は基本的に独立しています。この共通の世界観は、防衛省情報局などの組織が登場することでも示されています。

主要な用語

財団: M資金を管理運営する組織で、正式名称は「日本国際文化振興会（JIC）」です。傘下にヘッジファンドを持ち、世界各国で活動しています。その前身は「日本国際経済研究所」、さらに古い名前は「日米親善連合会」です。
防衛省情報局: 防衛省内に存在する日本の秘匿防諜機関です。作品中では「市ヶ谷」という通称で呼ばれることが多く、福井作品の多くに登場する共通の組織です。
E機関: かつてGHQ内に存在した特務工作機関です。
アポトーシス: 財団のイントラにサイバー攻撃を仕掛けたコンピュータウイルスで、福井の別作品にも登場する同タイプのウイルスです。

主要な登場人物

真舟雄一: M資金をネタにした詐欺を専門とする詐欺師。
M: ITベンチャー「アイネーク・イェーナ」の社主。真舟に「ある計画」を持ちかけます。物語中盤でその正体が明かされます。
石優樹: Mの腹心。近接格闘術や銃の扱いに長け、多言語を操る謎多き人物です。
本庄一義: 日[[本銀行]]の金融市場課長で、Mの計画に協力しています。
高遠美由紀: 防衛省情報局の局員で、M資金事案を担当しています。財団の理事を父に持ちます。
津山利一: 真舟の師匠である詐欺師。M資金の本質に近づいたため、暗殺されます。
沖山秀次: 真舟や津山と旧知の詐欺師。情報収集能力に長けており、旧ソ連のスパイだったという噂があります。
笹倉雅実: 元帝国陸軍の大尉で、M資金の源流となる金塊を隠匿した人物。後に財団の初代理事長となり、「伊豆の総理」と呼ばれました。
笹倉暢彦: 笹倉雅実の長男で、財団の現理事長。
その他: このほかにも、様々な立場の人物が登場し、物語を彩ります。

書籍情報

小説版は講談社文庫から以下の通り刊行されています。

人類資金I: 2013年8月
人類資金II: 2013年8月
人類資金III: 2013年9月
人類資金IV: 2013年10月
人類資金V: 2013年12月
人類資金VI: 2014年2月
人類資金VII: 2015年7月
限定版人類資金VII: 2015年7月
特別付録人類資金0

映画情報

映画版は2013年 10月19日に公開され、以下のスタッフ・キャストによって制作されました。

監督: 阪本順治
脚本: 福井晴敏、阪本順治
主演: 佐藤浩市、香取慎吾、森山未來、観月ありさなど豪華キャストが出演

映画は公開初週に興行収入ランキングで4位に入るなど、注目を集めましたが、批評家からは賛否両論の評価を受けました。