仁懿蕭皇后

仁懿蕭皇后（じんいしょうこうごう）は、遼（契丹）の興宗（こうそう）の皇后であり、小字（幼名）は撻里（たつり）といいます。

出自と入宮

欽哀蕭皇后（きんあいしょうこうごう）の弟である蕭孝穆（しょうこうぼく）の長女として生まれました。性格は寛容で、容姿は非常に端麗であったと伝えられています。興宗が即位すると、後宮に入り、後の道宗（どうそう）となる耶律洪基（やりつこうき）を生みました。

皇后として

重熙（ちょうき）4年（1035年）に、皇后に立てられました。重熙23年（1054年）には、貞懿慈和文恵孝敬広愛崇聖皇后（ていいじわぶんけいこうけいこうあいすうせいこうごう）の号を贈られています。

皇太后として

道宗が即位すると、皇太后に立てられました。清寧（せいねい）2年（1056年）には、慈懿仁和文恵孝敬広愛宗天皇太后（じいじんなぶんけいこうけいこうあいそうてんこうたいごう）の尊号を受けています。

反乱の鎮圧への貢献

清寧9年（1063年）の秋、耶律良（やりつりょう）が耶律重元（やりつちょうげん）とその子の耶律涅魯古（やりつでいこ）の反乱計画を太后に密告しました。太后は、この情報を道宗に伝えました。道宗は事態の重大さに躊躇しましたが、太后は「このことは国家の命運を左右する大事ですから、迅速に対策を講じるべきです」と強く進言しました。これを受けて、道宗は戒厳令を布告し、反乱に備えました。実際に戦いが始まると、太后は自ら衛士を督励して反乱軍を撃破し、国家の危機を救いました。彼女の迅速かつ果断な行動が、反乱の鎮圧に大きく貢献したと言えるでしょう。

崩御と諡

太康（たいこう）2年3月辛酉（1076年4月11日）に崩御されました。仁懿皇后（じんいこうごう）と諡（おくりな）されました。

人物評価

仁懿蕭皇后は、その寛容な性格と優れた政治的判断力で、遼の国政に大きく貢献した女性でした。皇后、皇太后として、常に国家の安定を願い、危機に際しては自ら行動することで、その手腕を発揮しました。彼女の生涯は、遼の歴史において特筆すべきものとして語り継がれています。

伝記資料

* 『遼史』巻71 列伝第1

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