皇太后

皇太后の役割と歴史的背景

皇太后（こうたいごう、英: Empress Dowager）は、主に皇帝や天皇、王の母や先代の皇后としての役割を持つ称号です。この称号は特定の母系の人物に与えられ、その権威や位において重要な位置を占めてきました。歴史的に見れば、皇太后の地位は国により異なり、各国の文化や政治体制による違いが見られます。

中国における皇太后

中国の「太后」という言葉は、元々君主の母を指すものであり、秦の昭襲王が彼の生母に対して太后の称号を与えたのが起源とされています。以降、漢代では在位中の皇帝の嫡母が皇太后となり、亡くなった場合には生母がこの称号に就くこととなります。ただし、明・清時代においては、皇帝の生母と嫡母の3位が存在し、儀式の際には母后皇太后の方が聖母皇太后よりも優遇されることがあったのです。

皇太后の立場は個々の君主の未亡人に付与されることが一般的で、先代の皇帝が退位した際にはその妻は太上皇后と呼ばれ、皇太后とは区別されます。皇太后の称号は往々にして追称として用いられることがなく、例外的に漢の武帝の妃であった趙婕妤がただ一人として皇太后の称号を有しています。歴史の中で初めての皇太后は前漢の呂雉であり、最後の皇太后は清朝の隆裕皇太后です。

日本の皇太后

日本においては、皇太后は天皇の母や先代の皇后の称号とされ、天皇の母であった者や先代の嫡妻もこの呼称を受けることがあります。天皇の生母が早死した場合には、即位の際に追贈されることも一般的で、白河天皇の母、藤原茂子などがその例として挙げられます。

また、嵯峨天皇の時代には中宮から皇太后に昇格することも見られ、皇太后の宮殿は大宮御所と名付けられるようになりました。明治維新以降は皇太后の位置が明確化され、皇族に含まれることになりました。そして、1920年の宮内庁の要請により、歴代天皇の后から生前の位でその名が呼ばれることが一般的となったのです。

近年では、天皇の退位に関する法律が改正され、上皇后という新しい称号が設けられ、歴史上新たな変革を迎えています。

朝鮮とベトナムの皇太后

朝鮮では王朝時代、君主は天皇や皇帝ではなく国王であったため「大妃」という名で呼ばれていました。1895年に大韓帝国が成立した際に皇太后という称号が生まれ、純貞孝皇后がその最初の称号保持者となり、歴史的意義が強調されました。

ベトナムでは、皇帝の元号に基づいて皇妃が皇后となり、皇太后も存在しました。最後の皇太后は保大帝の后、泰芳皇后です。

ヨーロッパの皇太后

ヨーロッパにおいても皇太后という称号が存在し、元上皇帝の未亡人に与えられることが一般的です。特に、オーストリア・ハンガリー帝国のツィタ皇后が最後の皇太后と目されています。日本には未だに天皇のもとに皇后という地位が残る一方、他国ではこの立場が変化してきたことにも留意すべきでしょう。

結論

皇太后の地位は文化や国により異なり、それぞれの歴史的背景によって形作られてきました。日本においては皇太后の称号が現在でも使用され続け、新しい法制度が築かれる中でその地位が注目されています。

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