今川正彦

今川 正彦

今川 正彦（いまがわ まさひこ、1911年（明治44年）1月4日 - 1996年（平成8年）12月7日）は、日本の官僚、都市計画の専門家（都市計画家、ランドスケープアーキテクト）、そして政治家として知られる人物です。特に、1981年から2期8年にわたり、京都府京都市長を務めたことでその名が広く知られています。

経歴

山口県防府市の出身です。岡山県第二岡山中学校（現在の岡山県立岡山操山中学校・高等学校の前身）で学び、その後、再興旧制山口高等学校（現在の山口大学の前身）に進みました。1935年（昭和10年）、東京帝国大学農学部（現在の東京大学農学部の前身）を卒業。大学では折下吉延に師事しました。

卒業後、今川は内務省に入省し、都市計画千葉地方委員会の技師としてキャリアをスタートさせました。戦前は中国での勤務経験を持ち、1939年には北京の華北政務委員会建設総省へ派遣されました。そこで終戦を迎えることになります。

終戦後も都市計画の専門家としてしばらく北京に留まりましたが、1946年夏に日本へ引き揚げました。翌1947年1月には戦災復興院の施設課長に就任し、戦後復興に携わりました。その年の暮れには経済安定本部へ出向し、さらにその後に設置された経済企画庁へ移り、国土総合開発計画の策定を担当するなど、国の重要な計画立案に貢献しました。

1955年、戦災復興院の後身である建設省に戻り、県への出向を経験しました。岐阜県で土木部計画課長を務めた後、1958年には静岡県へ異動し、土木部計画課長に就任します。静岡県では、静岡市と清水市を中心とする地域を対象とした「静清広域都市計画」を全国に先駆けて策定しました。また、製紙工場からの排水問題を解決するため、「岳南特別都市下水路」事業に着手するなど、地域課題の解決に向けた多岐にわたる事業を手がけました。

京都市での活躍

1961年には京都市へ移り、都市計画局長に就任しました。その後も建設局長、計画局長、都市開発局長、技監といった要職を歴任。1971年からは3期にわたり京都市助役を務め、市政の運営に深く関わることとなりました。

京都市長として

前市長である舩橋求己氏が病気で引退したことに伴い、1981年の京都市長選挙に立候補しました。選挙戦では「舩橋市政の継承・発展」を公約に掲げ、自由民主党、日本社会党、公明党の推薦に加え、日本共産党、民社党、社会民主連合といった幅広い政党の支持を得て出馬。「6党相乗り」と批判を繰り返した新自由クラブ推薦の元衆議院議員・加地和氏をわずかな差で破り、初当選を果たしました。

市長在任中には、洛西ニュータウンの建設推進、京都市営地下鉄烏丸線の開業、京阪本線の地下化事業といった大規模な都市開発プロジェクトを進めました。また、京都市の将来像を示す京都市基本計画の策定や、世界歴史都市会議の開催など、都市の振興と国際交流にも力を入れました。

1985年の市長選挙では、前回敗れた加地氏（新自由クラブ・社会民主連合推薦）に加え、同年6月に与党から離脱した日本共産党が推薦する湯浅晃氏（京教組副委員長）らを破って再選を果たしました。

古都保存協力税を巡る問題

市長在任中の大きな出来事として、1985年7月に導入を試みた「古都保存協力税」を巡る騒動があります。これは、寺社仏閣の拝観料に上乗せする形で税を徴収し、古都の景観保存などに充てることを目的としたものでした。しかし、これに対し京都仏教会が強く反発し、3次にわたる拝観停止などで対抗したため、紛争は深刻化しました。結果として、この税は導入からわずか3年後の1988年3月末に廃止されることとなりました。

引退と晩年

2期目の任期満了を前に、1989年に引退を表明しました。

1990年には、長年の都市計画、造園分野への貢献が認められ、日本造園学会より第8回上原敬二賞が贈られました。

1996年12月7日、上部消化管出血のため、大阪府枚方市内の病院で死去しました。85歳でした。

栄典

• - 勲三等旭日中綬章（1995年）

著作

都市計画や経済に関する多くの論文や記事を執筆しています。

• - 「富士箱根伊豆国立公園地域の道路整備の構想」（道路、1960年8月号）
• - 「北九州地域開発計画について」（都市計画、1955年10月号）
• - 「北九州特定地域総合開発計画について」（国土、1954年10月号）
• - 「失業対策と公共事業」（経済安定資料、1950年3月号）
• - 「公共事業監査結果に現れた諸問題」（経済安定資料、1950年3月号）
• - 「現下の失業問題と公共事業」（新都市、1949年10月号）
• - 「大都市と農業地」（造園雑誌、1935年7月号）
• - 「京の町づくりと都市高速道路網」（建設月報、1987年9月号）

※参考文献として『新訂 政治家人名事典 明治～昭和』、及び今川正彦氏へのインタビュー記事「今川正彦氏に聞く(上原敬二賞受賞者に聞く)」(造園雑誌、1991年3月)などが挙げられます。

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