今日出海

今日出海（こん ひでみ）の生涯と業績

今日出海は1903年11月6日、北海道函館市に生まれました。彼は文芸界で多大な影響を与えた小説家、文芸評論家、舞台演出家であり、また初代文化庁長官を務めたことで知られています。彼の長兄である今東光もまた著名な作家です。

彼の幼少期は、父が日本郵船の船長だったため、転勤による影響を受け、神戸で小学校生活を送りました。中学時代には病気での休学を経験し、その後東京の学校へ移りました。1922年には浦和高等学校に進学し、さらには東京帝国大学に入学し、フランス文学を専攻しました。彼の同級生には小林秀雄や中島健蔵など、後に著名な文筆家が名を連ねています。

演劇にも熱心で、1924年には築地小劇場を観ることで影響を受け、実際に演出に関わるようになります。また、中学時代から音楽にも親しみ、高校ではチェロを学びました。このように、彼の晩年にわたる文学・文化活動の土台が築かれていったのです。

1928年には東京大学のフランス文学科を卒業した後も、さまざまな分野で活動を続けました。特に演劇界においては、心座という劇団に関わり、その後蝙蝠座という新しい劇団の設立にも参加しました。また、1930年代には文芸誌の同人としても積極的に活動し、文芸評論や随筆、翻訳に携わりました。

1939年には明治大学の教授に就任し、学術的な活動も続けつつ、映画制作にも手を広げました。1941年には太平洋戦争が勃発し、陸軍の報道班員としてマニラに約1年間滞在しました。その後の戦争の混乱の中で、彼は逃亡生活を送りましたが、その体験は戦後の著作に大きく影響を与えました。

1945年には文部省の社会教育局文化課長に任命され、翌年には初代芸術課長として日本の文化政策に尽力しました。また、1946年には戦後の日本における文化の復興に寄与し、吉田茂首相への直訴を通じて、当時の芸術文化の振興に努めました。

その後も小説「天皇の帽子」で直木賞を受賞し、激しい執筆活動を展開しました。1970年代には文化庁の初代長官に就任し、国際交流基金の理事長も務めるなど、その業績は数え切れません。特に、モナリザの日本初公開や唐招提寺展を実現させたことは彼の文化交流の成果として挙げられます。

今日出海は、1984年に神奈川県鎌倉市で85歳で亡くなるまで、日本の文学と文化に多大な影響を与え続けました。彼の著作には『大いなる薔薇』や『天皇の帽子』などがあり、文芸界における重要な存在として今なお記憶されています。彼の生きざまは、文学だけでなく、日本文化の発展にも多くの足跡を残したといえるでしょう。

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