中島健蔵

中島健蔵の生涯と業績

中島健蔵（1903年2月21日 - 1979年6月11日）は、日本のフランス文学者、文芸評論家であり、翻訳家、文化交流家、切手コレクターとしても知られています。彼は、心理学者の中島泰蔵の長男として東京に生まれました。父はハーヴァード大学でウィリアム・ジェイムズに師事し、帰国後、早稲田大学で教鞭をとるなど、恵まれた環境で育ちました。

教育と文学への目覚め

幼少期は自然科学に興味を持っていた中島でしたが、親戚の前田夕暮の歌集に触れたことをきっかけに文学への関心を深めます。東京高等師範学校附属中学校（現・筑波大学附属中学校・高等学校）では、下村三郎、市原豊太、菊池正士、坪井忠二らと学び、サッカー部では全国優勝も経験しました。また、この頃から川田順、若山牧水らの短歌や、国木田独歩、夏目漱石らの小説に傾倒していきます。

フランス文学との出会い

東京帝国大学（現・東京大学）では、フランス文学を専攻し、ボードレールを原語で読むことを目標としていました。辰野隆に師事し、小林秀雄、今日出海らと親交を深めました。大学卒業後は研究室に残り、助手を経て臨時講師となります。市河三喜との間に確執があったものの、大学内でフランスの稀覯書を自由に収集するなど、独自のスタイルを確立しました。

戦時下の経験と戦後の活動

1942年には陸軍に徴用されマライに派遣されましたが、年末に帰国しました。戦後は、日本文芸家協会の再建に尽力し、理事に就任しました。また、日本著作家組合の創設にも関わり、書記長を務めました。言論の自由を擁護し、伊藤整のチャタレー裁判では弁護人として活躍しました。1950年代には、新日本文学会や日中文化交流協会にも積極的に参加し、日中文化交流に尽力しました。

多彩な才能と影響

中島健蔵は、フランス文学の研究、評論活動にとどまらず、宮澤賢治の作品に光を当てたことでも知られています。また、中国切手のコレクターとしても著名であり、そのコレクションは高く評価されています。音楽にも造詣が深く、中島健蔵音楽賞が設けられていました。彼の業績は、文学、文化、社会の多方面にわたって影響を与えました。

中河与一ブラックリスト事件

戦時中に中河与一が「ブラックリスト」を警察に提出したという噂がありましたが、これは平野謙によるデマであるという説が有力です。中島もこの事件に関与していた可能性が指摘されています。

晩年と死

1960年に東京大学大学院講師となった後、1962年に辞職。1979年、肺癌により死去しました。享年76歳。

主要な著作

『懐疑と象徴』（1934年）
『現代文芸論』（1936年）
『現代作家論』（1941年）
『文芸学試論』（1942年）
『戦後の五十一断章』（1948年）
『フランス文学入門』（1949年）
『昭和時代』（1957年）
『自画像』（全5巻、1966-71年）
『回想の文学』（全5巻、1977年）

翻訳

ポオル・ヴァレリイ『ヴァリエテ』（1932年、佐藤正彰と共訳）
ボードレール『芸術論』（1953年、佐藤正彰と共訳）
アンドレ・ジード『オスカー・ワイルド』（1941年）

中島健蔵の遺産

中島健蔵は、文学、文化、社会の多方面にわたって貢献した人物でした。彼の業績は、多くの人々に影響を与え続けています。

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