仏向町

仏向町（ぶっこうちょう）

横浜市保土ケ谷区の西部に位置する仏向町は、保土ケ谷区内でも特に広大な面積を持ち、多くの人々が暮らす町として知られています。町域は1.812平方キロメートルにおよび、これは区内で最大規模です。住居表示は現在も実施されておらず、丁番を持たない単独町名となっています。

この町の一部、特に西部地区の新興住宅地は、2010年12月に行われた住居表示の実施により「仏向西」として分離されました。しかし、本稿では分割前の仏向町の範囲に基づいて解説します。

地理と特徴

仏向町の北東部には相鉄本線が通り、地域住民の主要な交通手段の一つである和田町駅が町内に設置されています。南端には横浜新道が東西に走り、星川町や東戸塚駅方面への路線バスが運行されており、広範囲へのアクセスが可能です。また、町の中央部を東海道貨物線が通過していますが、残念ながら町内に駅は設けられていません。

仏向町の空を見上げると、高さ103メートルにもなるNTTコミュニケーションズの巨大な無線中継所が目に入ります。このコンクリート製の建造物は、かつてはmmbiの「NOTTV」放送送信所としても使用され、現在も仏向町のシンボル的な存在となっています。

歴史と産業の変遷

仏向町の町名は、その由来について諸説ありますが、『新編武蔵風土記稿』には、仏様に供える食物を意味する「佛餉」に由来するとする説が記されています。

古くは橘樹郡に属する仏向村として存在しました。1889年（明治22年）には坂本村と合併して矢崎村の一部となり、さらに明治42年には矢崎村が保土ケ谷町と合併したことで、保土ケ谷町の大字仏向となりました。その後、1927年（昭和2年）4月1日に横浜市に編入されて現在の町域が新設され、同年10月1日には区制施行により保土ケ谷区に編入されるという歴史をたどっています。

かつて仏向町には、日本の近代産業を支える大きな工場がありました。栗田工業の横浜研究所や、日本カーリットの保土ヶ谷工場です。しかし、時代の変化とともにこれらの施設は移転しました。栗田工業は1985年に厚木市へ、日本カーリットは1995年に群馬県へそれぞれ拠点を移しました。

日本カーリットの工場では、過去に二度、痛ましい爆発事故が発生しています。1955年8月2日の事故では21人、1958年1月14日の事故では2人の尊い命が失われ、多くの負傷者が出ました。これは、この地域が抱える歴史の一側面です。

現在の仏向町

工場跡地は、移転後に新興住宅地として開発が進められ、多くの新しい住民を迎えることとなりました。特に日本カーリット工場跡地の一部は、2011年に「たちばなの丘公園」として開園しました。この公園では、操業当時の遺構が一部保存されており、地域の歴史を今に伝えています。

仏向町とその周辺には、市沢・仏向の豊かな里山や谷戸の原風景が残されており、その保全活動も積極的に行われています。「ホタルの里水辺愛護会」は、こうした自然環境の保全に取り組み、その功績が認められ、平成13年度には国土交通省の手づくり郷土賞（地域活動部門）を受賞しています。

町の中心部には、住宅地が広がっており、2023年1月1日時点の公示地価では、字前耕地の一地点で1平方メートルあたり19万8000円となっています。

地域には、横浜市立橘中学校や横浜市立仏向小学校といった教育機関のほか、むかいはら幼稚園、岩崎学園附属幼稚園があり、子供たちの学びを支えています。また、特別支援教育総合センターや横浜市水道局西谷浄水場分庁舎といった公共施設も点在しています。

交通網

町内には相鉄線の和田町駅があるほか、横浜新道沿いや幹線道路を経由して、複数の路線バスが運行されています。相鉄バスは横浜駅西口、和田町駅、東戸塚駅などを結び、横浜市営バスも保土ケ谷駅西口や和田町駅を結ぶ系統があり、地域の移動を支えています。

郵便については、郵便番号は240-0044で、保土ヶ谷郵便局が集配業務を行っています。

工場が移転した後の跡地開発が進み、宅地化が進む一方で、たちばなの丘公園や里山など、自然環境の保全にも力が入れられています。過去の歴史を大切にしつつ、新たな住宅地としての発展と、豊かな自然との共存が図られている地域と言えるでしょう。

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