仏龕

仏龕（ぶつがん）とは、仏像や経文を安置するために設けられた小室、または容器のことを指します。その形態は様々で、壁面や仏塔に作られたものから、屋内に安置するためのものまで存在します。

仏龕の形態

石窟寺院の仏龕: 石窟寺院の壁面を掘り込んで仏像を安置する形式が典型です。バーミヤン石窟のように、仏像そのものが崖壁から削り出された大規模なものも存在します。
仏塔の仏龕: 仏塔の内部に、仏像を安置するための小さなスペースが設けられることがあります。これも仏龕の一種です。

仏龕の発展

仏龕は、時代とともにその形態を変え、様々なものへと発展しました。

厨子（ずし）: 屋内に仏像を安置するための容器として、仏龕から発展したものが厨子です。厨子は、仏像を保護し、荘厳する役割を果たします。
枕本尊: 携帯できるように、観音開きの扉を備えた小型の仏龕も存在します。これは枕本尊と呼ばれ、旅の安全や個人的な信仰のために用いられました。

諸尊仏龕（しょそんぶつがん）

高野山金剛峯寺には、空海（弘法大師）が入唐時に持ち帰ったとされる国宝「諸尊仏龕」が残っています。これは高さ20cmほどの白檀材で作られており、前後に切り分けられた前面部分が観音開きになる構造をしています。扉を開くと、内部には精巧な彫刻が施された諸仏諸菩薩が現れます。これは密教美術の貴重な遺品であり、仏龕の歴史と多様性を示す好例と言えるでしょう。

仏龕は、単なる仏像の安置場所としてだけでなく、信仰の対象としての役割も担ってきました。その多様な形態は、仏教文化の広がりと深化を物語るものであり、美術史的にも重要な意味を持っています。

関連事項

厨子
念持仏
仏壇
壁龕

外部リンク

* 高野山霊宝館（諸尊仏龕の画像）

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