観音開き

観音開き（かんのんびらき）

観音開きとは、2枚の扉や似たような構造が左右の端を軸として、中央から左右の方向に回転して開く形式のことを指します。この名称は主に観音菩薩像が納められた厨子の形状に由来しています。

基本構造

観音開きの扉は、左右の戸枠に設けられた蝶番を中心に、逆方向に開閉する設計になっています。この方式の特徴は、片開きの扉と比較して、広い開口部を確保できる点です。特に人の出入りが多い店舗や、大きな荷物を運ぶ必要がある場所で重宝されます。加えて、同様の開口面積を維持する場合、片開きの扉よりも開閉面積を小さくすることができるため、狭いスペースにも適しています。

このような開き方は、床までのガラス窓にも適用されることがあり、その場合は「フランス窓」や「フレンチドア」と呼ばれ、多くはバルコニーやテラスの出入口として利用されます。

自動車における観音開き

欧州市場向けのバンなど、自動車のバックドアでも観音開きのデザインが多く見受けられます。特にフォークリフトを使用する荷役作業には、この型式が好まれます。扉が270°の角度で開く設計が一般的で、車体に沿って開くため、扉が邪魔になりにくいのが特徴です。一方で、インナーリアビューミラーの視界を妨げない工夫から、通常は左右のドアの大きさに差があります。

さらに、北米市場に出るピックアップトラックの中では、特に後席の乗降を容易にするために観音開きのデザインが採用されます。この場合、リアドアのサイズが小さく設計されることが多く、側面衝突に備えて前後ドアの合せ目にピラーが備えられることがあります。また、リアドアにはアウタードアハンドルがなく、前のドアを開かないとリアドアが開けられない仕組みになっています。

使用上の課題

乗用車においても観音開きの扉が設計されることがありますが、現在では数が減少しています。その理由としては、リアドアの設計が「スーサイドドア」と呼ばれる形になりやすく、衝突などの影響で乗員が車外に投げ出されるリスクがあるためです。また、走行中に風圧でドアが戻りにくくなる場合もあり、安全性の観点から課題があります。一般的には、現在の乗用車でリアドアのみを開閉できる観音開きのデザインはほぼ見られませんが、比較的便利さを追求する形でフロントドアを開けてからでないと開閉できない工夫が施されることはあります。

派生用法

観音開きという言葉は、様々な分野で使われています。例えば、料理では魚の切り身や鶏肉に中央から包丁を入れ、両側に開いて薄くする切り方を指して観音開きと呼びます。また、俳句や連句において、連続する3つの句の3番目が1番目と同じ素材やスタイルを持つことを、観音開きと称しています。これは、3つの句が対称の形式を持っていることに由来する言葉です。

観音開きは、実に多様な場面で利用される便利な開閉方法であり、その構造やメリットはさまざまな分野で役立っています。

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